Finance Records

上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

財務戦略は成長戦略に紐づいている。ネットフリックスの成長の鍵である投資はファイナンスへの理解にあった。

 

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https://www.netflix.com/jp/browse/genre/839338

NETFLIXは成長のために多大な投資を行い続けています。データを介して顧客の声を聞き、その声に従って、新規コンテンツには多額の投資を行っています。その視点は明らかに長期的。参入障壁をどのように築くのか、継続の収入をどのように確保するのかという視点に立って計画が策定されています。

 

また、私がNETFLIXは非常に参考になると思うのは、「独自に成長していこう」と決めてから、財務戦略と投資戦略が尋常じゃないほど変更されている点です。

後述しますが、2015年からの投資額がえげつない事になっています。これは長期的に目指す姿が変わると、戦略が大きく変わり、意思決定が大きく変わったことを示しています。

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これらは企業の目指す姿と財務戦略、そして企業の意思決定は非常に重要かつ密接ですので、NETFLIXを通してその一端を確認していきましょう。

 

NETFLIXは利益の何倍も投資に回している(ように見える)

 

NETFLIXは動画配信のサブスクリプションサービス。有料会員が中長期的に増えていくことこそが、企業価値の最大化に貢献します。

 

つまり、コンテンツが面白い、価格が安いなどといった理由などからユーザーに受け入れられ、有料会員が伸び続けている事こそが、現在のNETFLIXの価値の証明でもあります。

 

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この投資によって有料会員は伸び続けていますが、実際問題、NETFLIXはこの多額の投資をどうやって実現しているのでしょうか?

 

前回の記事において、NETFLIXは既に利益を出しており、事業から資金を創出する事が出来ている事はご紹介しました。

 

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しかし、NETFLIXの価値の源泉である有料会員。この有料会員を獲得する為に、ネットフリックスはコンテンツに多額の投資をし続けています。その額は到底利益で賄えるものではありません。

 

 

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稼いだ利益の何倍もの投資を行っているように見えますよね?このような事はいかにして可能だったのでしょうか。カギになるのはファイナンスと会計。つまり財務への理解です。

 

ネットフリックスの成長のカギになる投資はファイナンスへの理解にあった。

 

さて、まずはネットフリックスは実は純利益以上に多くのキャッシュを稼ぎ出しているという所からお伝えしていきたいと思います。

 

ネットフリックスの利益構造を改めて見てみましょう。原価が最も大きく、売上の6割近くを計上していることが分かります。

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この原価の中身は非公開のようなのですが、NETFLIXのアニュアルレポートを見る限り、この中身に多額の減価償却費が含まれている事が分かります。

 

“The increase in domestic streaming cost of revenues was primarily due to a $358 million increase in content amortization relating to our existing and new streaming content, including more exclusive and original programming.”

(ネットフリックスのアニュアルレポートより抜粋)

 

この減価償却ですが、「費用にはなるけどキャッシュが出ていかない」という性質のものになります。これがどういう事かというと、「実際にネットフリックスが稼ぎ出したキャッシュの額は、当期の純利益よりも大きい」という事なのです。

実際に減価償却を足し戻してみましょう。すると、売上の半分近くをキャッシュとして稼ぎ出していることが分かります。

 

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利益とキャッシュの創出額は異なるのです。

 

改めて「純利益と投資額」と「“実際にネットフリックスが事業で稼いだキャッシュ総額”と投資額」を比較してみましょう。

 

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このようにしてみると、一見クレイジーであった投資額も、それに近い額を回収できているということが分かるかと思います。(といっても9カ月で1500億円近い支出がありますが。)

 

NETFLIXは投資を決定する際に、決して利益の額の中から投資の意思決定をしている訳ではなく、稼ぎ出したキャッシュと現在保有しているキャッシュのバランスも見ながら投資意思決定を行っています。この投資の視点には、5~10年という長期的な時間軸の先にFCFを最大化しようという思想が垣間見えます。この辺りが財務と会計を理解しながら経営を行わない限り出てこない意思決定です。

 

事業的に魅力のあるコンテンツに投資が必要なのはわかった。ではその裏側にある財務戦略は?

 

さて、NETFLIXは利益ではなく、実際に稼ぎだしたキャッシュを基準として投資を行っている事。そして、実際にはその稼ぎ出した額以上に投資を行っている事。その目的の先にはFCFの最大化がある事を確認しました。

 

では、それを支える戦略はどのようになっているでしょうか。

 

NETFLIXは異常なまでの拡大志向ですのでこの流れをしっかりと成功させるためには適切な財務戦略を構築しておかなくてはなりません。

 

実際にビジネスをする際において、資金の創出する基本軸は「事業からの回収(粗利の最大化)」、「資金調達」「サイトをいじる」「アウトソーシング化の検討」の4つしかありません。

 

つまり、NETFLIXが想定する企業価値最大化の為には、事業から回収という、現状あるリソースだけでは足りません。また、ビジネスモデルの性質からして「サイトをいじる」「アウトソーシング化」することが難しい為、外部から引っ張ってこなくてはいけないのです。

 

資金調達には市場から調達するか銀行などの外部から調達するかの2種類ですが、NETFLIXのキャッシュフロー計算書を確認すると、外部からの調達であるデッドファイナンスを選択しています。

 

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外部からの資金調達は、自社の事業のリスクに対応する調達方法を選択する事が基本になります。リスクが高い事業であれば市場から、リスクが低い投資であれば銀行などで調達をすることで資金調達コストとリターンの整合性をとるのです。

 

配信サービスは基本的にリスクが高いですが、ネットフリックスはそのリスクをビジネスモデルで解消しています。

 

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ネットフリックスの売上は、このように四半期決算であっても季節性なくきれいに積みあがっていくのですが、これがサブスクリプションの強み。収入が安定して見込めるので、売上が変動するリスクを抑えることができるのです。

 

このように、動画の配信という、普通に考えれば当たるか当たらないか分からないものをビジネスモデルの力でリスクを減少させることができているのがNETFLIXです。

 

成長の為に外部からの資金調達を最大限活用し、世界のコンテンツとしのぎを削っています。企業価値を最大化する為にビジネスモデルを構築し、その目的に沿って適切に財務調達を行って一気に成長する。

成長路線に舵を切った時に「利益はもう出ているんだから、その利益の何割を投資に振り分けるべきか」という思考をNETFLIXがもししていれば、確実に今の姿にはなっていなかったでしょう。

 

成長に向けて、事業を磨く以外にも、適切な財務戦略と意思決定を行う事が必要だということがよく分かりますね。

 

このように、企業を成長させようとする経営者がどのようなリスクを負い、どのように成長させていこうとしているかを知るという点において、ネットフリックスは非常にいい教材なのではないかと思います。

 

成長戦略を選ぶと方向性が大きく変わる。ネットフリックスは事業戦略・財務戦略の非常にいい手本になる。

 

規模感は全く異なりますが、個人的にはネットフリックスから学べることは二つあると思います。

 

一つは、リスクのある事業でも、ビジネスモデルの構築の仕方によってはそのリスクを下げることができること。リスク低減の為の鍵になるのはリピートしてもらうこと、サブスクリプション的な仕組みを作る事です。基本的にはどのようなビジネスでもこのようなリピート率の高い商品を組み込むことはおススメです。

 

もう一つは、ファイナンスを十分に活用する事。そして「その為の投資は基本的に手持ち資金だけでやるのではなく、一気に成長させる」という事。

 

ネットフリックスはもともとここまでの成長志向ではなかったようですが、2012年にハリウッドがネットフリックスに対して最新のDVDの配信停止と、デジタル配信の使用料を引き上げた事に伴い、ネットフリックスは自社でオリジナルコンテンツを作って成長することに決めます。

 

ハリウッドなどからの配信を利用するのと、オリジナルコンテンツで生き残りをかけようとするのは当然リスクも戦略も大きく異なります。

実際、ネットフリックスも方針変更後の、投資と成長の戦略は大きく異なっています。

 

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戦略を変えて急激に成長する事が求められるや否や、事業にこれだけの投資を行っています。その際に適切な財務戦略を立案する。

これが、財務面において経営に必要なスタンスなのではないかと思います。

どのようにポジションを取り、どのように成長していくか。そしてその為に必要な財務戦略はどのように構築していくか?この関係性の重要性をネットフリックスは教えてくれますね。

 

終わりに

 

NETFLIXの資金調達と投資の関係を見ていきました。オリジナルコンテンツを拡充していくという方法は、ユーザーを飽きさせないという点において強力に機能していましたね。

 

このようなビジネスモデルを考え、顧客に喜んでもらうのは経営者の醍醐味といってもいいでしょう。しかし、ネットフリックスはビジネスモデルだけではなく財務面。資金調達面が非常に優れていました。

 

ネットフリックスのように成長志向である企業は、自分たちで稼いだ利益以外の部分からキャッシュを調達し成長スピードを加速させていく事が重要です。

こちらはどう対応すればいいのでしょうか。日本においては、それは銀行の特性を知り、銀行に応援してもらうこと。

 

銀行の決算書の見方は下記の記事にも書いています。が、この見方も依然として重要なのですが、金融検査マニュアルが廃止された今、必要なのは「事業性評価」に対応できるか?という視点です。

 

この事業性評価ができるかどうかで、銀行からの調達額は全く異なってきます。事業性評価は決算書の数値のみでは判断することができません。ではどうするのか。

 

下記の銀行の決算書の見方以外にも、要望があれば書いていきますのでメールなどでご連絡ください。 

www.finance-seisekihyo.com

 

 

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セミナーなどでは、更に突っ込んだ話をさせていただきます。

気になった方はご自由に!

 

5年で85%の企業がつぶれる現状を何とかしようよ

 今の日本は5年で85%の企業が潰れてしまいます。企業が潰れる理由はひとつだけ。現預金が尽きるから。お金が無くならないと会社は潰れない。でもお金に対する知識がないから潰れていってしまうのです。

 

しかし、現在の日本は調達天国です。調達の際の金利は数パーセント。

これは世界市場の資金調達コストに比べて倍近く低いコストです。

これは大きなチャンスなのに、うまく利用できていない企業が多いのは非常にもったいないと思います。

 

企業が成長する際にもお金が必要不可欠ですが、その成長の為の投資を行うにあたって、自社で儲けた利益のみで賄うのは日本の税制上不可能です。

 

節税は企業の体質を脆弱化させます。

 

そうなると、銀行からの資金調達を戦略的に利用することこそ、今の日本の企業に必要な思考です。

 

調達に成功し、大きな現預金を持つ企業は更に成長していきます。私はビジネスモデルがしっかりした企業が、資金を大きく調達して一気に成長していく姿を何度も見ています。このことからも分かる通り、経営を加速させるためには、ビジネスモデルと財務の両輪が必要なのだと実感しています。

 

「赤字の企業には銀行はお金を貸してくれない」

「借金は借りたら返さなくてはいけない」

「融資を受ける時には、保証や担保がとられるのは当たり前だ。」

「覚悟を示すために保証に入る」

 

これらは全て間違いです。

しかし、社長にはややこしい数字周りや銀行の勉強も、理解も必要ありません。最初に企業の状況、投資先、調達後のビジョンなどのヒアリングのお時間を頂けますと、その後は私が御社の財務戦略を支援します。

 

その間、あなたはご自身の事業に集中し、その磨いた事業であなたの顧客を幸せにして下さい。今やるべきは、資金調達の為に掛けている時間を買い、本業に集中することです。

そして、調達した資金を元に的確な投資を行い、更に顧客を幸せにしていただければと思います。

  

 

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