Finance Records

上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

【経営の為の決算書の使い方】JINSの成長の為の財務戦略は非常に優秀な成功例。中方企業が活用する方法はこうだ!

今回は、「資金調達を行って一気に成長した企業の事例」を確認してみたいと思います。(注:書いていてなんですが、今回無料で書くレベルの範囲を超えているような気がしています(-_-;)なので反応が少なければ1カ月ほどで記事を消しますのでよろしくどうぞ!)

 

その企業はJINS。時価総額ではメガネ業界の不動のNo.1プレーヤーです。

 

ジンズの上場時期は2006年。2012年には東証一部に上場しています。その2006~2012年時点においては、メガネ業界は斜陽産業になりつつありました。

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https://pdf.irpocket.com/C3046/qzIz/SkRG/zSBZ.pdf

 

一般的な企業であれば、業界の市場規模と共に売上が停滞していくのが一般的です。しかし、ジンズはそんな市場環境を意に介さず、ぐんぐんと業績を伸ばし続けています、

このJINSの快進撃の中でも、ひときわ伸びたのが2013年。これは東証一部に上場を果たした年ですね。

 

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ジンズが東証一部に上場を果たした年に売上高が一気に伸びた理由は、ビジネスモデルや商品が優れていただけでなく、成長に必要な資金を調達することができたからです

 

このように、視点を変えて見てみると、ジンズは企業の成長には優れたビジネスモデルや商品の他に優れた財務戦略がないと成り立たないと教えてくれる事例でもあるでしょう。

 

ジンズのビジネスモデルは「ユニクロ式」

 

では、まずジンズの優れたビジネスモデルを確認しておきましょう。ジンズのビジネスモデルは一言で言うと、「ユニクロ方式」です。

ユニクロ方式とは、今まで「製造→仕入→販売」を様々な業者が専門性を持って介入していた部分を、すべて自社で一気通貫に行っていく事。これによって、まずは中間マージンをカットする事が可能です。

 

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更に、SPAは自社で商品を企画している為、何度も何度も商品を企画する事が可能です。つまり、長い目で見れば売れ筋商品を確保することができる仕組みという事です。

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更にジンズは、自社で商品を開発する為のR&Dセンター(研究開発)を保有しています。この結果、ジンズは「JINS PC(現JINS SCREEN)」「Air frame」などの革新的な商品を発明し、市場をけん引してきました。

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https://www.jins.com/jp/jins-screen/

ジンズはビジネスモデル上でSPAを採用した結果、いい商品を開発する能力が非常に高くなっていると言えます。

更にSPAの良さはこれだけに留まりません。いい商品の開発はもちろん、中間マージン削減の為の「物を売ったら入る利益」である粗利益の割合が高くなります[i]

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ジンズにとってSPAは、「メガネ業界に革新をもたらす商品を開発することができる仕組み」と、「そのメガネを安く製造して利益を増やす仕組み」の2つをもたらしてくれています。

 

ジンズの売上アップの原因は、明らかに優れたビジネスモデルだけではない

 

いい商品を次々と生み出すジンズ。その背景にはSPAを含むビジネスモデルがあったことはお伝えした通りです。そして、このようにビジネスモデルがしっかりとした企業は、財務を整えることによってさらに飛躍する可能性を秘めています

 

我々は社長に「結局、お金がお金を呼んでくるんですよ」ということがありますが、このジンズの事例もまさにそのような事例の代表格といえるでしょう。

 

このキャッシュ・フロー計算書のグラフをご覧ください。キャッシュ・フロー計算書とは、要は利益ではなく現預金の推移を示したものです。

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特徴としては、現金を、「事業活動で増減したもの」「モノや設備への投資、売却で増減したもの」「銀行や市場からの調達で増減したもの」の3種類に分けて色付けしている所にその特徴があります。

 

注目なのは2012年末。上場を果たしたことによって現預金が一気に増加しています。

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今までの事業の規模だと必要ないのではないか?という程の資金調達量ですよね。しかし、実際にこの資金調達によって、ジンズは「事業で稼いだお金」が一気に増加します。

 

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資金調達以前と以後の事業で稼いだ額を比較してみると、資金調達後は調達以前の数倍に跳ね上がっています。

ビジネスモデルは1年で一気に変更することはできませんし、ジンズはもともと2012年の上場以前からビジネスモデルを磨いている企業です。そう考えると、このジンズの稼ぐ力の増加は、明らかに資金調達によって何かしらの影響があったものと考える方が自然です。

 

ジンズが資金調達によって行った投資とは?

 

さて、とは言っても、ただただ現金を持っただけでは企業は大きくなっては行きません。現金は勝負時に必要な額を惜しみなく使えるからこそ意味があるのです。

 

ジンズのお金の使い方を見てみましょう。ジンズが多額の現金を得た2012年に使った投資のトップ3は、店舗への投資、人への投資、お客様を増やす投資の3つです

 

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これらへの投資の総額は何と167億円。その年の現金の保有額が67億円だったので、なんとジンズはこの年にもともと保有していた現預金の2.5倍近くの投資を行っている事が分かります。

 

お金を持ったときに何に投資するべきか悩む方も多いですが、店舗への投資、人への投資、お客様を増やす投資の3つに絞ると費用対効果は高いはずです。

 

また、非常に面白いのがジンズの広告宣伝の使い方です。ジンズは資金調達で現金を保有することができた2012~2013年にかけて、ここが勝負時と言わんばかりに積極的に投資を推し進めています。

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理由は複数あります。まず、ジンズが販売しようとしていたのが、従来の「視力矯正」という意味のメガネではなく、「花粉を防ぐ」「ブルーライトを防ぐ」「ドライアイを防ぐ」といった、「視力の良い人」に向けて販売を行ったこと

 

当然ですが、目的がないとメガネ屋さんには行きません。視力の良い人にとっては、知らなければまさに関係が無い場所です。そのような人に向けてメガネ屋に行く理由を作る為に、攻めの投資が必要でした。

 

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http://www.jins-jp.com/st/norikae/

 

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https://pdf.irpocket.com/C3046/GpH7/FVTE/tGhJ.pdf

 

結果として「非矯正市場」という新たな市場の創出に成功したジンズは、その年の決算の予想を上方修正するまでになりました。

 

そこから一気に認知度を高めたジンズは、広告宣伝の比率を下げ、売上に直接貢献する店舗と人件費への投資を継続、現在も多額の投資を続けることによって、更に事業で稼ぐ力を強化していっています

 

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このように、ビジネスモデルが整っている企業は、多額の現金を保有する財務戦略を組んでいくと、一気に成長する可能性を秘めています。その為にはできるだけ多くの資金を保有して、一気に投資すると効果的です。

 

銀行や市場からの資金調達は、そのような投資をする元手を一気に増やしてくれる存在です。このような戦略を、中小企業も使わない手はありません。では、この戦略を中小企業がどうやって活用すればいいのかについて検討していきましょう。

 

 

 

 

銀行から応援してもらえる状況にするのが最も効果的

 

はい、結論から書いていますが、ジンズの成功をトレースしようとすると、銀行に応援してもらう状況を作り出すことが最も効果的です

まず大前提として基本的にすべての投資は先にキャッシュが出ていきます。企業は赤字では潰れませんが、キャッシュが尽きたときに潰れてしまいます。

 

投資は大きな額を一気に使ってしまいます。もちろん投資は成功することもあれば失敗もあります。その失敗した時に、一気にキャッシュを失い、企業は窮地に立たされるのです。

投資はしていかなくては企業は成長しない。しかし投資は失敗した時に大きなリスクがある。そのような時に企業が取るべき戦略は、財務戦略を上手く活用する事です。

 

その時に、銀行に応援してもらい、事前に資金調達を行うことができると非常に強い。

実際に、BSとPLは「保有している現預金を投資に回す→売上が増加する→利益が増える」というように、連動しています。いい投資を行うという事は、企業が長期的に見て売上を伸ばして利益を捻出する為に必要な工程なのです

 

この投資を行う際に、銀行から調達した部分を使って投資を行うことによって、そもそも自分たちでキャッシュを溜めて投資に回すよりもはるかに早くて大きな投資を行うことができます。

 

おすすめは、事前に運転資金で銀行から調達をしておく事です。いい投資先が見つかってから調達依頼を掛けていても間に合わないことも多いですし、タイミング次第では借りられないかもしれません。

 

一方、運転資金として事前に十分なキャッシュを保有していると、ライバル企業に大きな差をつけた投資を行うことができ、結果的に充分なリターンを得ることができるようになります。

 

それは今回の記事の序盤に確認したジンズの事例を見ても明らかでしょう。

 

ではどのように銀行から多くの資金を調達すればいいかですが、これは「銀行の格付けをあげる」というのが正しい戦略です。

格付けを上げることによって、銀行は資金の調達方法や返済方法、金利、返済期間など、どんどん自由にできるところが増えてくるのです。

 

銀行の格付けを上げるには?

まず意識するべきは、①本業での利益を上げられる状態にする②実質的な資産と負債を把握する③節税はしないの3つです。

 

格付けを上げるには、まず「格付けとはどんなものか?」を知らなければなりません。格付けとは銀行が貸出先に行うランク付け。全体としては「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の6つに分かれます。

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この中で、銀行が融資に積極的になるのは「正常先」だけ。つまり、銀行からの資金調達を行い、伸びる企業というのは財務状況が優れた企業に限られるのです

この正常先に入る為には、企業の業種業態によりますが、基本的には3つのポイントを抑える必要があります。

具体的には、「①借入依存度を60%に抑える」「②経常収支比率を3期のうち2期で100%にする」「③実質長期負債返済年数を10年以内に収める」の3つ。ですが、これは興味がある方は具体的に自社の財務諸表をお持ちいただいた方が的確なアドバイスが可能ですのでご連絡ください。

 

これらを達成する為には、本業で利益を上げられるようにしなければなりません。また、決算書を銀行は実質で見ようとしますので、その思考を理解しておく必要があります。また、節税をして財務諸表が弱ると簡単に借入依存度が上がりますので、これも企業の成長が一気に鈍る原因になります。

 

最後に

 

優れた企業はさらに伸び、節税などをしている企業は成長するタイミングを逃してしまう。

このような事は実際に起こり得る事態です。

誰だって、企業経営者は本業でお客さんに喜んでもらって、その結果自社が成長して業績が上がった方がいいでしょう?財務戦略として事前に資金を調達して、それを投資に回して、事業を加速させていくという方法はそのようなサイクルを加速させていきます。

 

成長サイクルに乗ってお客さんに喜ばれる企業になりましょう。

それが結果的に自分にとってもリターンとなって返ってきます。役員報酬を取ってもいいですし、M&Aで企業を更に大きくしてもいいですし、逆に大企業にM&Aをしてもらい、大企業のヒトモノカネ情報を使って更に大きな経営をしていく事も可能です。

 

業績を伸ばしていくと、その企業が取れる選択肢が強く、豊富になってきます。そうやって、早く次のステージに行く事が結果的にやりたい事を達成する手段になり得ます。

 

その為には事業を磨く以外にも、このように財務諸表を武器にするような思考が必要です。

もしやり方が分からなかったらご連絡ください。

私は経営者のビジョン達成を加速させるためにいます。

 

士業は基本的に消費者に直接かかわる仕事ではありません。しかし、経営者の方々の事業を加速させ、その結果多くの消費者を幸せにするサポートをしたいと思っています。

 

士業ってその為にいるでしょう?

 

メールでご連絡いただいてもいいですし、セミナー参加して頂いてもいいですし、ツイッターで連絡してくれても何でもいいです。出口を決めて、そこに向かって最短距離で大きく進んでいきましょう。経営者と士業の関係はそういうものでありたいと思っています。

 

連絡先は

financerecords.management@gmail.com

 

もしくは直接話す場合には

www.finance-seisekihyo.com

までどうぞ。 

 

[i] 三城もSPAでの販売もありますが、製造場所は鯖江で原価も高いでしょうし、売り場を眺めるとブランドのメガネに相当の販売スペースを割いているので、粗利率は低くなる傾向にあるようです。