Finance Records

上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

ZOZOのBSは、ZOZOのビジネスモデルの強みと弱みを教えてくれる。

 

今回はZOZOの決算について見ていきたいと思います。

ZOZO離れなど世間を騒がせていたZOZOですが、冷静になってその企業の内容を見てみると、その経営内容は非常にスマート。そしてその内容はBSから確認する事が可能です。

 

ZOZOの財務分析記事においてビジネスモデルやBSについて細かく言及されている記事は中々ないのですが、企業の意思決定が財務内容に反映される例として面白いので、取り上げていきたいと思います。

 

ZOZOの基本的な構造を再確認

 

さて、改めてZOZOの仕組みを確認していきたいと思います。

ZOZOは基本的にプラットフォーム事業。ユーザーとブランドの間に入り、販売を仲介する事をメインの業務にしています。

 

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https://zozo.jp/

そんな企業なので、当然販売のサイトは洗練されまくっているのですが、そのサイトを支える裏側も非常によくできています。

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https://corp.zozo.com/ir-info/management-policy/business-model/

 

ビジネスモデルを見てみると、ZOZOは単純に販売だけを担うのではなく、フルフィルメント」という、採寸、撮影、保管、ピッキングを担っています

 

配送業者は基本的にヤマト運輸が代行していますが、販売だけではなくこのようなECに必要な作業をまとめて行っている事から、ZOZOは販売の代行手数料を30%近くとっています。

 

ZOZOは基本的に前澤社長が実質的な広告塔となっており、その言動が騒がれがちではありますが、ZOZOという企業の実態としては日本のファッションECサイトとしては非常に強い仕組みを構築しています。では、その仕組みは財務諸表上にどのように表れているのかを見てみましょう。

 

BSは企業の意思決定が見えてくる

 

ではBSを見てみましょう。このBSは見方があります。

 

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通常、上記のように右側と左側に分けて数字を区切っているのですが、その分け方のルールは以下のようになります。

 

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こんな感じですね。どのように資金を調達し、その資金をどのように投資しているのか?これが分かるのがBSですね。

 

調達サイドの確認~資金繰り対策はシンジケートローン

 

 まずは調達サイドを見てみましょう。

数字だけでは直感的に理解し辛いので、ブロックで表現しています。色の違いは区分の違いですね。

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まず内訳を確認すると、調達サイドは「流動負債」の項目が大きいことが分かります。その内、最も大きな項目は「短期借入金」。

次に「受託販売預り金」ですね。短期借入金は昨年自己株の購入に使われており、今期はシンジケート方式でコミットメントライン契約が締結されています。

 

契約期間内であれば早期に短期融資を実行してもらえる契約ですね。これが締結された理由としては、ひとえにZOZOの資金繰りが非常にタイトである一点に尽きます。 

www.finance-seisekihyo.com

 

過去記事ではその辺りの内容を書いている記事もあります。

  

今回のBSを見ても、調達サイドの流動負債の大きなブロックで「受託販売預り金」があります。この受託販売預り金とは、要は「販売後、ブランドに支払う必要がある預り金」です。

例えば1万円の洋服を売った際には、「7,000円がブランド側、3,000円がZOZO側」となるのですが、ユーザーは最初はZOZOに全額入金します。

 

この内、今後ブランド側に払わなければならない分が「受託販売預り金」という項目です。

 

ZOZOの契約内容は不明ですが、入金後支払いサイトは長くても数カ月でしょうから、この受託販売預り金は実質的に資金繰りを圧迫します。

恐らくその対策としてシンジケートローンが組まれているのでしょう。

 

投資サイドの確認~保有資産からZOZOのビジネスモデルがよく分かる

 

次にキャッシュの投資サイドを見てみましょう。

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投資のサイドは流動資産が大半を占めています。先ほどのようにすぐに支払わなければならない「受託販売預り金」が多かったのに対応するかのように、売掛金と現預金が非常に多くなっています。

 

しかし、改めてZOZOは売掛金がめちゃくちゃ多いですね…ZOZOは数年前から「ツケ払い」として、「支払は2ヶ月後でいいよ」という商品購入方法を提案しているのですが、恐らくこれの販売方法と、売上と入金の期間がずれるクレジットカードの売上の二つが売掛金となっています。

 

それに対して、洋服という商品を扱っているにも関わらず「商品」という項目が異常に小さい。これが先ほどのZOZOのビジネスモデルに関係してきます。f:id:parrrrrao:20190821190437p:plain

https://corp.zozo.com/ir-info/management-policy/business-model/

 

ビジネスモデルを見ると、商品をZOZOTOWNに移動する場面は、「仕入」ではなく「入荷」の文字が。言葉としては変わらんだろと思われるかもしれませんが、ZOZOは商品を仕入れている訳ではないのです。

 

あくまでブランドの洋服の「販売を代行」する為に入荷しているだけ。これによって、ZOZOは商品の売れ残りリスクを自社で持たないことに成功します。

 

これはZOZOの強みと直結するビジネスモデルになっています

ZOZOはこの仕様により、ブランド側が望む限り、ZOZOTOWNというサイトには多くの商品をどんどん掲載する事ができるのです。

 

実際、ZOZOは当初は自社で商品を仕入れて販売する形式を取っていましたが、受託販売に移管後、数年を経て取り扱いブランド数や登録ユーザー数を急激に増加させることに成功しています。

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(色々調べても正確な移行期間は見つかりませんでしたが、決算説明書を見る限りFY2012辺りから本腰を入れてきています。)

 

これは個別個別のブランドのECサイトに対して強烈な差別化要因になります。

 

例えば「ナノユニバースのジャケットとビームスのジャケットを比較したい」という際に、それぞれのブランドをわざわざ行き来する人はあまりいません。めんどくさいですからね。

 

ZOZOは商品の在庫リスクがない為、このようなブランドのサイトの行き来が必要なくなります。こういう仕様は「特定の好きなブランドはないけれど、いい物を比較検討して購入したい」という人にはかなり有用です。

  

その大元はECサイトの使いやすさはもちろんの事、このような在庫を持たない戦略にもあり、それは財務諸表から確認する事が可能です。

 

 

ZOZOが再び物流に本腰を入れ始めた

このようなこのように、企業の戦略やビジネスモデルはBSに反映されます。ちなみに、ZOZOはもう一つ、物流にも非常に力を入れています。

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これは、ZOZOが各ブランドの商品を引き取って、撮影から保管、ピッキング、梱包まで行う企業だから。

ECサイトという特性上、注文が入ったタイミングで商品を自動的にピッキングして梱包していかなくてはなりません。保管している在庫数が膨大である為、人間が注文後商品を探してピッキングする作業には限界がある為です

 

だからこそ、この部分を自動化する為にZOZOは物流に多くの投資を行っており、有形固定資産はかなり多額の投資が行われ、今後も行われる予定です。

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https://d31ex0fa3i203z.cloudfront.net/wp/ja/wp-content/uploads/2019/07/J_2020_1Q_2.pdf

今期のZOZOの決算説明書を見ると、今後物流に多額の投資を行っていくという内容が書かれています。

 

まとめ

 最後になりましたが、ZOZOが最も強みとするのは受託販売のビジネスモデルです。これは各ブランドがZOZOに在庫を預ける為、他企業への参入障壁も築くことができています。また、今後は物流も更に大きな投資をしていく事が読み取れます。

 

この企業がさらに物流に投資していくという事はつまり、ZOZOが自社の本来の強みの部分を更に強化していくという意思の表れだというように読み取る事ができるのではないでしょうか。

 

一方、運転資金という意味ではZOZOはかなりギリギリです。特に売掛金の増加は企業の資金繰りを圧迫する要因にもなり得、その為シンジケートローンを組成しなければならなくなっている事はZOZOの弱みになりえます。

 

このように、あまり触れられることはありませんが企業のBSからは企業の意思決定が垣間見ることができます。

 

今後伸びていくのかどうかを見る際には、BSで「どうやってお金を集め、何に投資しているのか」について見ておきたいですね。

 

次回の記事では、最新のZOZOのPL、財務状況について取り上げ、「ZOZO離れでZOZOはどうなったのか?」について見ていきたいと思います。