Finance Records

財務諸表や決算書は企業の成績表!!さまざまな分析を通して財務の面白さをお伝えします。

ニトリの財務戦略から出店戦略まで。色々な角度からニトリの成長を見てみよう。

今回はニトリの成長戦略について。

前回の記事で取り上げたように、ニトリは不動産を自前で購入した戦略上、リーマンショックなどの不況をきっかけに躍進した企業でもありました。

 

ちなみに、32期連続増収増益という異常な記録を打ち立てた企業でもあるのですが、直近で出た決算発表では営業利益が成長していません。今期は1年前と比べて営業利益の成長が止まってしまっています。

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2019_1QFinancial%20Report.pdf

成長が止まったのか、出店が多すぎて収益性が悪くなってしまっているのか…いろいろと推測ができそうな結果ですが、私はこれは為替の影響だと思います。為替関係はニトリの成長戦略とも密接にかかわってきますので、今回は為替がニトリに与える影響から見ていきたいと思います。

  

ニトリの財務戦略はなぜ為替を見なければならないのか。

 

まずは大きな枠組みの財務戦略から見ていきましょう。

ニトリはビジネスモデル上、海外から材料を安価に仕入れて、外部協力工場で商品を製造するビジネスモデルを取っています。

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https://www.nitorihd.co.jp/division/business_model.html

 

「品質・機能を伴った価格1/2」の目標の通り、実際にニトリの商品を見てみると、安価であるにも関わらず、製品自体はクオリティが高いものも多いです。

 

この「海外からの仕入れによって原価を減少させ、海外の協力工場において、クオリティの高い商品を安価で提供する」という方法はニトリのビジネスの根幹です。

 

当然海外での仕入れが中心になってくるため、為替の変動は大きなビジネスのリスクになります仕入を海外で行うというのは、財務諸表上では「粗利率」に変化が生じます。

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https://www.nitorihd.co.jp/news/items/NITORI%20FY2018_1QFinancial%20Report.pdf

 

このスライドからも「仕入れにかかる為替レートの影響」によって、原価が0.9p、「棚卸資産にかかる為替レートの影響」によって1.0p減少している事が見てとれると思います。

 

1.9pはそんなに多くも見えませんが、ニトリの2019年末の粗利は3314億円。このレベルになると、1.9pと言っても60億円近くの差が出てきます。ニトリは中長期目標で売上高一兆円企業を目指すと宣言していますが、そのクラスであれば数百億円単位でズレが生じできます。

 

このような世界をマーケットにしている企業にとって、為替というのは非常に大きな外部要因になるのです。

 

この為替リスクに対して、会計上為替を先に固定する「ヘッジ」という手法を用いて最小化させていきます。

ヘッジが行われれば、財務諸表の貸借対照表のうち、「為替予約」が変動します。ニトリはこの為替予約が、140億円を超えたり、0円であったりと非常に激しい動きになっています。

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今期は円高になるとの予想に反して円安になってしまったため、為替予約を行っていなかったようです。

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https://jp.reuters.com/article/nitori-interview-idJPKBN1EL08O

 

結果としては円安となってしまい、粗利率が1.9pも減少してしまいましたが、似鳥会長が主導となって行われる程、ニトリにとっては非常に重要な戦略なのです。

 

ちなみに、今期ニトリが為替レートの影響で変動した粗利率は1.3p。単純にこれが為替予約によって防ぐことができていたとすると、営業利益に反映される額は約21億円。一年前に比べて増加する計算になります。

 

ニトリのような企業は、単純に物がたくさん売れたから増収増益になるのではなく、為替レートが大きな影響を及ぼしているのだということがよく分かりますね。

 

資金調達は変わらず自己調達、資金投資先はここ数年大都市圏内に。

 

さて、引き続きニトリの成長戦略という視点からニトリの財務諸表を眺めてみたいと思います。

財務戦略という面ではまず見るべきは企業の貸借対照表(BS)です。

 

ちなみに、BSの右側は資金調達方法、左側は資金運用方法を示しています。色付けするとこのような区分けがされています。

 

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 BSの見方で注意する部分はこれだけ。では右と左で分けて見ていきますね。

 

資金調達サイド(右側)を確認すると

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 ニトリの資金調達方法は基本的には一貫して“自己で稼いだお金”です。

新事業を展開する為の株の購入等の大きな資金調達が必要な場合には借り入れを行うこともありますが、基本的には自社で稼いだお金を投資に回しています。

 

資金調達サイドの額を、数字の大きい順にマッピングするとその額の大きさは一目瞭然。

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自社で稼いだお金を示す「利益剰余金」が大半を締めている事が分かりますね。この自社で稼いだ分を使って、ニトリは店舗や土地、物流などに投資しています。

 

資金運用サイド(左側)の詳細を追うと戦略の変遷が

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 BSの資金運用サイドは前回の記事で確認しましたね。ニトリは自社で土地と店舗を保有していました。

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せっかくなので、この中身を詳しく見ていく事にしましょう。

中身を確認すると、ニトリのここ数年の戦略の変化を体感することができます。

 

例えば地域別の売上高。ニトリはもともとドミナント戦略(ある一定地域に出店を集中して物流などのコストを下げ、経営効率をよくする戦略)を採用しています。

これによって、あるエリアが急激に売上が成長することも十分にあり得ます。

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https://www.nitorihd.co.jp/division/business_model.html

 

実際、各事業別の売上高を2003年と現在とで比較してみると、北海道や東北のシェアは小さくなり、代わりに近畿圏内の売上高が伸びている事が分かります

 

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しかし、近年はこのドミナント戦略に比例して売上が伸びている訳ではありません。実際、関東は売上のシェアが下がっているものの、いまだに出店が増え続けています。

 

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実はここにニトリの出店戦略の変更点が隠れています。通常ニトリの店舗はドミナント戦略によるロードサイド出店が中心でしたが、近年は都心部への出店を増やしているのです

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/2016%201Q%20Financial%20Report.pdf

きっかけは2016年の銀座への出店。店舗面積が小さくなり、出品数が1万品から3000品へと少なくなります。売上が伸びないものの、従来のニトリの価格に比べて高価格帯の商品を多くそろえ、高収益化を狙うことが可能です。

 

ニトリは全国に店舗を配置することによってロードサイドを制圧しましたが、それに安寧することなく、異なる出店戦略を組みなおして企業をまた新しい成長サイクルに乗せようとしている事が分かりますね。

 

「ニトリが出店を続けている」という情報だけでは字面以上の事は分かりませんが、このように情報を分解していくと、「ニトリはロードサイドへの出店から都心部の出店に切り替え、都心部を中心に3000㎡以下の店舗の出店を強化している」ということが分かり、今のニトリの狙いがよく分かるようになるのではないでしょうか。

 

もう一点、ニトリが種まきをしている部分が。

 

ちなみに、もう一つニトリが種まきをしている分野が中国への出店です。

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上記は海外への出店数をまとめたものですが、中国への出店が圧倒的に多いことが分かります。この戦略は今までのニトリの戦略を踏襲したもので、中国にバランスよく出店することによって、全国への商品集荷・供給体制を整えている事が分かります

 

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_2017_2Q_Financial%20Report.pdf

 

中国はO2O戦略の発祥の地であり、店舗でショールーミングしてからネットで決済するような購買行動が当たり前となってきているそう。スマホ発のそのような環境の変化に対して、ニトリは上記のような店舗配備を行い、自前で物流を構築している強みを存分に活かそうとしているように見えます。

 

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2019_1QFinancial%20Report.pdf

そして今期からは中国への出店を抑え、出てきた課題に対して対策を打っていく年と位置付けているようです。

 

忘れてはならないのがニトリはSPA業態。

このように店舗を出店して、商品を配送できる環境を整えておけば、売れ筋商品が見つかるまで何度も企画・開発・発送・販売のサイクルを回すことができます。

 

今はまだ日本での売上が大半であるニトリですが、今後数年の間に中国は出店を加速させていくのではないでしょうか。

 

まいた種は実を結んでくれるのでしょうか。数年後のニトリはさらに期待できるのかもしれませんね。

今回はここまで。ありがとうございました。

 

 

私がなぜ財務分析をしているのか

 

 

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私は「社長は自身の事業を磨くことに集中でき、磨いた事業は社長の顧客を幸せにする。その為に私が社長の財務を担う」という関係性を提供します。

 

このブログでは財務分析に特化していますが、手元現金が増えていく為の財務戦略構築、銀行からの資金調達、資金繰りの管理などを行っています。

 

なぜそのような事を行うかというと、企業を発展させる鍵は社長にあるからです。財務は非常に強力ですが、社長は自身の企業の経営のキーとなる数点の指標を把握していればいい。

 

理解する必要もない100ある財務情報を聞くのはもうやめましょう。本質的に重要な数点のみ認識しましょう。そして社長は、自身の顧客を幸せにすることに集中してもらいたいと思います。

 

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私は財務の面からそれをサポートしていきます。

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