Finance Records

財務諸表や決算書は企業の成績表!!さまざまな分析を通して財務の面白さをお伝えします。

「お、値段以上」の裏には様々な戦略が!ニトリの高収益体質と躍進の背景を分析しよう

今回はリクエストを頂きまして「ニトリホールディングス」について取り上げてみたいと思います。

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ニトリ公式企業サイト

リクエスト頂けるのは嬉しいですね。今後取り上げて欲しい企業等ありましたら是非ご連絡ください!(financerecords.management@gmail.com)では早速見ていきたいと思います。

 

外部環境に関わらずニトリの業績は絶好調

 

まず全体的な情報を。ニトリは「お、値段以上」のCMでおなじみ、安価に家具を販売している企業です。

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https://www.nitori-net.jp/store/ja/ec/

近年はECにも力を入れている、日本を代表する高成長企業ですね。

 

 

そんなニトリですが、実は外部環境という意味ではそんなに恵まれてはおりません。ニトリの属する家具小売業界は、1991年をピークに法人数、市場規模共に年々減少してしまっています。

 

特にバブル崩壊、リーマンショックのタイミングで法人数も市場規模もガクッと減ってしまっています。この事から、家具業界は景気の変動を受けやすい業界であることが分かります。

 

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_FY2018_4Q_Financial%20Report.pdf

 

そんな中、ニトリは外部環境もモノともせずになんと32期の増収増益を達成。

店舗数の増加に伴い、買上客数も増加し続けています。

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_FY2018_4Q_Financial%20Report.pdf

 

この増収増益、買上客数の継続的な増加の裏にはどのようなビジネスモデルや戦略があり、その結果財務状況はどのようになっているのでしょうか。確認していきましょう。

 

ニトリのビジネスモデルはSPA

 

 まずニトリを分析する際に避けて通れないのがこのSPAという業態への理解。以前までの業態であれば、企業は上の図のように製造・仕入れ・販売がバラバラで、各企業がそれぞれを担っているという様な関係性でした。

 

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この業態は各企業の専門性が高くなるため、高品質化・高度専門化が可能となります。しかし、各企業当然利益を出していかなければならないので、それぞれで中間マージンが発生します。

 

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SPA方式ではこれらの中間マージンが一掃でき、それによって商品を安く提供することが可能となります。しかし、当然企画・製造から関わるという事は自社で在庫リスクを抱えるという事になりますし、製品のクオリティを自社ですべて管理する必要もあります。

 

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この事から、構造的にSPAはハイリスクハイリターンであるといえます。ならばリスクを潰し、リターンを最大化することが求められます。

 

ニトリのSPAの活かし方

 

では、ニトリはどのようにSPAを組んでいるのでしょうか?ニトリの仕入れと製造工程について見てみましょう。

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https://www.nitorihd.co.jp/division/special/

こちらは材料の仕入れ。「商社などに依存するのではなく、拠点から世界中の情報を集め、海外メーカーとの交渉も行い、世界から良質で安価な原材料を調達している」とあります。

 

また、一番下に「世界各国の要望に合わせた商品づくりや高速出店に対応できるよう、各市場に向けたサプライチェーンの確保を進めています」とあります。

 

さらっと書かれていますが、いい物を安く作ることができ、色々な要望に合わせて商品を作る事が出来るのはSPAの大きな大きな強みです。ニトリはこのSPAの強みをフル活用していますね。

 

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https://www.nitorihd.co.jp/division/special/

次に製造。製造は自社で工場を保有しているのではなく、海外などの協力工場が製造を担うというのが近年のSPAの特徴でもあります。

 

ニトリもただ外部委託をするのではなく、協力工場にニトリの社員が常駐し、品質の管理を行っているようです。

 

また、ニトリは現段階でも2019/02時点で576店舗を保有しており、販売力もかなり強いです。この販売力の強さは、「品質管理・在庫リスクを自社で抱えなければならない」というSPA方式のデメリットをかなり解消していると思われます。

 

また、これに加えて、近年ニトリは物流への投資も非常に活発です。

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/2017%203Q_Financial%20Report.pdf

 

ニトリの物流網は近年激しい投資が行われています。特に目を引く取り組みとしては2016年に発送システムを一新し、店舗在庫ではなく通販在庫から商品を発送する仕組みに変更しています。

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_2017_2Q_Financial%20Report.pdf

 

そして2017年には、お客さんが店舗で商品を確認し、その商品を持ち帰らずに通販で自宅まで発送ができるという「手ぶらdeショッピング」をリリース。

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_2017_2Q_Financial%20Report.pdf

これはオンラインとオフラインをシームレスにつなげるというアリババのジャック・マー会長が提唱しているO2O戦略を踏襲しています。

 

今後ニトリが物流に力を入れ続け、「店舗で購入した1日後には商品のソファが家にある」というような状態をもし作ることができれば、日本国内では敵う企業はどこにもいなくなるでしょう。

 

ニトリにとって、物流への投資は非常に重要な一手であるように思います。

 

実際の決算書を見てみよう。

 

SPAの強みを存分に生かし、一方でデメリットは上手く潰しているように見えるニトリ。その業績は一体どのようなものなのでしょうか。まず損益構造を確認してみましょう。

 

ニトリのPLは超高収益体質

 

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ニトリの損益構造はこのような感じです。営業利益の時点で17%も残っている非常に高収益な体質です。競合他社とその利益率を比較してみましょう。

比べるのは売上総利益率と営業利益。

二つの利益のザックリした見方は下記の通りです。

 

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この二つの利益率がどれだけ高いのか。インテリア業界の各社で比較してみましょう。

 

横比較した粗利率にはビジネスモデルの差が表れる

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まず粗利率。ニトリの粗利率は各企業の中で最高規模ですね。粗利率は販売した商品の製造費用などが計上されます。

ここには企業のビジネスモデルの差が表れます。グルーピングするとこのような感じに。

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SPAは基本的に質のいい商品を大量販売できるので、高利益率化する場面が多い。大量仕入れなどによるスケールメリット、中間マージン排除によるコスト削減の効果がここに表れているといえるでしょう。

 

次に粗利率が高いのが大塚家具などの高級商品販売業。高級商品は、ただ家具を買うというだけでなく、「そのブランドのコンセプトやヒストリーを買う」という購買行動がとられます。エルメスやヴィトンなどを想像すればよく分かりますね。

 

モノとしても一流ですが、例えば「エルメスをつけている自分」に気分が上がるというのがブランドの持つ最大のメリット。物に対して「情報」が付与されているので、粗利率は高くなる傾向にあります。

 

実は大塚家具は在庫一掃セールなどと称して値引きを行いましたが、それでも余ってしまった在庫の評価減などが計上されてここ数年でこの粗利率は急降下しています。

 

このことからも、大塚家具のお家騒動、そして値引き戦略などはブランドが命の高級家具を扱う企業にとっては大きな痛手になっている事が分かります。

 

中間の価格帯を狙っているナフコや島忠などは最も低い粗利率に収まっていますね。

 

営業利益率はビジネスモデルの成否が分かる

 

さて、次に営業利益率を見てみましょう。営業利益率は製造だけではなく、販売や物流の費用も組み込んだうえで測定されるので、事業としてどれだけ儲かるのか。ビジネスモデルがどれだけ綺麗に組めているのかという事も測れます。

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ここでもニトリが圧倒的な利益率をたたき出しています。ビジネスモデルが相当上手く組めているという証拠でもありますね。おなじSPAである無印良品と比べてもこの利益率が非常に高い。

 

一方、大塚家具を見ると測定不能になってしまっています。これは、大塚家具が営業利益を捻出できずに赤字になってしまっているから。

 

高級路線は利益率が高くなる代わりに、例えば販売する場所の家賃なども高額で維持費がかかりますので、赤字が止まらなくなるというリスクもある事がよく分かります。

 

さて、粗利率、営業利益率を見てみると、ニトリは非常に優良な企業だということがよく分かります。

 

では、ニトリのどの部分が優良な収益構造を生み出しているのでしょうか。良品計画と比較して、その秘密を探っていきましょう。

 

ニトリの高収益体質は企業の意思決定の違いにあった。

 

実はニトリは、販管費(物を売る為に必要な人件費や賃借料などの費用)を詳しく見ると、賃借料がかなり低いことが分かります。

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こちらも同じSPAである良品計画の損益構造と比較してみましょう。すると、良品計画の賃借料と比べて、賃料が4%も低いことが分かります。

 

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実は良品計画とニトリの損益構造は、互いにSPA方式で成功している企業だけあって、この賃借料以外の部分は非常に似通っています。

ニトリの超高収益体質を支えているのは、この賃借料が低さにもあるのです。

 

ではなぜ賃借料が低いのでしょうか。

 

これはニトリが、販売用の店舗などを自社で保有しているからです。

 

ニトリと良品計画のBSの左側を比べてみよう

 これは財務諸表の内、貸借対照表(BS)を確認すると分かってきます。貸借対照表は、企業がどのように資金を集め、その資金をどのように運用しているのかを確認することができる表です。

 

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実際にはこのような関係性で配置されています。今回比較するのは資金運用サイド。左側ですね。通常ここは重要性が高いものほど額が大きくなっていきます。小売であれば商品が最も大きくなるのが普通です。

 

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良品計画の資産内訳もマッピングした図。

これをみると、最も大きいのは商品。次に現金、そして建物(近年良品計画も物流工場に大規模な投資をしてこの部分が大きくなりました。)、そして敷金の順番に並んでいます。当然、現金を商品に変えて経営を行っていますね。

 

では、ニトリはどうなのかを確認してみましょう。

ニトリが最も多く資金を換金しているのは何と土地。そして建物、次に現預金、商品と続きます。ニトリは総資産の46%を土地と建物に投資しています。

 

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これは、ニトリが販売用の店舗を自社で保有している影響です。一方、良品計画は販売店舗が賃貸である事が多く、自社で保有していないため、この資金運用サイドには計上されず、先ほどPLで確認した賃借料に計上されます。

 

少し専門的な話ですが、日本において土地は減価償却されないため、ここのインパクトは非常に大きいものとなります。

 

さて、これで答えが分かりました。

 

ニトリのPL上の高収益体質は、SPA方式に加え、販売店舗や土地も自社保有することからもきているようですね。

 

この土地と販売店舗の自社保有はニトリの躍進を支える結果に

ちなみに、この戦略はニトリの躍進を支える事にもなりました。f:id:parrrrrao:20190703100712p:plain

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_FY2018_4Q_Financial%20Report.pdf

一番最初にご覧いただいたスライドですが、ここの店舗数が、2006~2010年の間に大きく増加していることが分かります。

 

これはリーマンショックによって土地などの価格が大暴落したから。その間にニトリは土地などを買い進め、店舗を比較的安価な値段で取得することに成功しているのです。

 

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https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI_FY2018_4Q_Financial%20Report.pdf

 

そうやって見るとこの店舗図も非常に面白いですね。ニトリは全国に土地を保有する不動産屋でもあるのです。とはいえ、ニトリは日本全国を全て押さえつつありますね。今後の成長可能性はどうなのかは次回検討したいと思います。

 

さて、ニトリの高収益の要因から、資産運用サイドの確認をしてきました。

 

ニトリが基本的には多くの土地を保有している事。そしてその戦略がリーマンショックなどを成長躍進の機会に換えてきたことなどが大きな要因のようですね。

 

ニトリについては他にも色々と取り上げていきたい事があるので、後数回分析記事をアップしていきたいと思っています。

 

この記事はこの辺で。どうもありがとうございました。

 

 

私がなぜ財務分析をしているのか

 

私は通常業務が終わった後や、フリーの時間を使って企業の財務諸表を眺め、この記事を書いています。なぜこのような財務分析を続けるのか。

 

単純に企業の財務分析が面白いというのもあるのですが、一番は社長が本業を通して顧客を幸せにすることに集中する為の財務分野のパートナーであるべきだからです。

 

私は資格として税理士を保有していますが、驚いたことがあります。

それは普通の税理士はお金のこと、企業の財務の事はさっぱり分からないという事実です。お金が増えても何で増えたのか分かりません。何で減ったのかも分かりません。

 

事業の収益性を事前に評価し、リターンが得られるかどうかを判定するスキルも、自分から学んでいない限り、恐らく得てはいないでしょう。

 

ですが、税理士は社長に最も近い存在である士業であり、財務分野のパートナーになるべき存在

 

だから私はいろんな企業の分析を行い、そのノウハウや分析スキルを自分の顧客に全力で注ぎます。

 

私が提供するのは「社長は自身の事業を磨くことに集中でき、磨いた事業は社長の顧客を幸せにする。その為に私が社長の財務を担う」という関係性。

 

このブログでは財務分析に特化していますが、顧客には手元現金が増えていく為の財務戦略構築、銀行からの資金調達、資金繰りの管理などを行っています。

 

なぜそのような事を行うかというと、企業を発展させる鍵は社長にあるからです。財務は非常に強力ですが、社長は自身の企業の経営のキーとなる数点の指標を把握していればいい。

理解する必要もない100ある財務情報を聞くのはもうやめて、本質的に重要な数点のみ認識しましょう。そして社長は、自身の顧客を幸せにすることに集中してもらいたいと思います。

 

自分が愛する顧客を幸せにすることに集中できる環境を想像してみてください。

私は財務の面からサポートしていきます。

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