Finance Records

上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

Amazonの利益の源泉はあの事業?コスト構造から分かるAmazonの思想。そして資金調達方法は全ての企業のお手本になるレベル!

今回は世界最大企業の一つであるAmazonの財務諸表を見ていきたいと思います。

とは言っても、Amazonの財務諸表は実は非常に分かりづらい(笑)様々な事業を大きな規模感でやっている為、全体像が非常につかみづらいのです。

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(米ウィキで調べたサービスリスト。34個あるようです。)

 

しかし、世界トップクラスの企業がどのような損益構造なのか、またどのような部分が成長しているのか等、どのような戦略をとるのか、探れる部分を探っていきたいなと思います。

 

Amazonは利益を出さない企業っていうのは本当か?

Amazonの話でよく出てくるのが「Amazonは利益を出さない会社」という説明。これは一体どういうことなのでしょうか?

 

まずは本当にAmazonが利益を出していないのか。損益構造を基に確認していきたいと思います。

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これが2018年12月31日、今から半年前のAmazonの損益構造になります。

今回は割合で示していますが、先に実額で売上高全体の額を示しておくと2328億ドル、今1$108円程度なので、日本円に直すと25兆1517億9600万円になります。

とんでもない額の売上高ですね。

 

税引後の利益率は4%。確かに思ったより利益率は高くないのですが、この売上の規模だと4%でも100億ドル。日本円で1兆878億円の純利益です。

 

売上は割合の大きいものからオンラインストア、サードパーティの販売、AWS、店舗販売、サブスクリプション、その他になります。

 

我々としてはオンラインストアが最も一般的でしょうか。

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https://www.amazon.co.jp/ref=nav_logo

この売上がAmazonの売上の約半分を占めています。日本円で13兆2825億9600万円。次はサードパーティの売り上げ。これは、Amazonというマーケットプレイスを使って、業者が販売した中から手数料を徴収したものになります。この売上の金額は4兆6164億6千万円です。

少し数字が落ちているように見えますが、先ほど述べたようにこれは売り上げ全体ではなく売上からAmazonが手数料を徴収した分になります。

 

売上総額(GMV)だけで言うと、サードパーティの売り上げは本家Amazonの売上を超えてしまったそうです。

 

Amazonという一企業の持つ販売力の高さがうかがえますね。

 

次に売上高が大きいのはAWSですね。2兆7707億4千万円の売上となっています。

 

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https://aws.amazon.com/jp/about-aws/

このAWSの売上だけでファーストリテイリング並の売上となっています。

 

そして店舗の販売(AmazonGoや買収したホールフーズなどでしょう。)が1兆8601億円、アマゾンプライムやkindle unlimitedといったサブスクリプションサービスなどが1兆5301億円、その他の売上高で1兆916億円と続きます。

 

このように、各事業で年間売上高1兆円を超えるという、Amazonは紛れもないモンスター企業です。

しかし逆に考えれば、Amazonは年間24兆円近い金額を費用として計上している事になります。一体どのような構造なのでしょうか。細かく見ていきたいと思います。

 

アマゾンのコスト構造にはAmazonの思想が漏れ出てきている。

 

これが2018年12月31日、今から半年前のAmazonの損益構造になります。

 

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まず、最初に気になる部分は売上原価でしょう。売上の60%を占めています。

 

Amazonの売上原価は商品のコストと配送料なのですが、ここは数年前の損益構造と比較すると面白いことが分かります。

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 何と、売上原価は71%と、2018年に比べて10%も高いことが分かります。更に詳しく見てみると、2009年は80%近い売上原価は、年々減少していっている事が分かります。

これは一体何を意味するのでしょうか。

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Amazonのアニュアルレポートによると、Amazonは取引量の増加、フルフィルメントの最適化、サプライヤーへの交渉、オペレーションの最適化などを通じて出荷コストを最大限減少させるというような記述がなされています。

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(見えないかな…?実際のアニュアルレポートはこちらになります。

https://ir.aboutamazon.com/static-files/ce3b13a9-4bf1-4388-89a0-e4bd4abd07b8

 

ただし、そのコスト削減をした分利益が増えたのかというとそんなことはありません。配送のコスト削減で浮いた分は、フルフィルメント(配送センターなどへの投資)への費用であったり、テクノロジーへの投資(AWSに対する費用)に変わっています。

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このように、コスト削減で下がった分得られた利益をすべて投資に回しているということがよく分かりますね。一番右の緑色の部分が営業利益なのですが、ご覧いただけると分かる通り他の費用への投資に圧縮されてほぼ残っていません。

 

成長して得られた利益はとことん投資してまた自社のキャッシュの創出に貢献させる-

Amazonの経営の考え方が表れているようなコスト構造だと言えるのではないでしょうか。

 

売上と営業利益の伸びを確認

Amazonがどのようなサービスを行っているのか。そして、どんな費用構造なのかを確認していきました。次に、売上の推移を確認していきましょう。Amazonは売上を「アメリカ国内の売上」「世界での売上」「AWSの売上」の3つにセグメントして開示しています。

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これを見ると、アメリカ国内での売上はやはりかなり大きいですね。2017年から2018年に売上が増大していますが、これはアメリカ国内のホールフーズを買収した影響でしょうか。

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https://www.amazon.com/b?ie=UTF8&node=17235386011

Amazonはこの買収によってリアル店舗から顧客にアプローチできるようになりましたね。中国のアリババなどから起こったO2O(オンラインtoオフライン)という流れ。

今は日本にも降りてきており、良品計画やニトリなどが取り入れています。

 

このO2O戦略は消費者がネットで商品をショールーミングし、店舗で実物を確かめ、配送してくれるネットで最終的に注文するというような流れを取ることもあります。アリババの生鮮食品のHemaStoreなどは実際の果物を店舗で見た後、ネットで決済します。すると即座に配送が始まり、30分以内にはその商品が自宅に届しまいます。

 

お分かりのように、この仕組みは物流網がキモになってきますが、Amazonは先ほど見たようにフルフィルメントに多額の投資を行っており、2018年は3兆6000億円近い投資を行っています。そのように見ていくと、このホールフーズも今後Amazonの売上をさらに伸ばすファクターになってくるでしょう。

 

話が少しそれてしまいましたが、Amazonはアメリカ国内、世界、AWSともに売上の成長率が著しい企業となっています。これだけでもAmazonのすごさは十分わかるのですが、この売上と、各事業の営業利益まで見てみるとその特徴はさらに浮き彫りになってきます。

 

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その営業利益がこちらになります。手に入るデータが2014年以降のものしかないのですが、アメリカ国内事業、海外事業、AWSの順に大きかった売上高に対し、営業利益はAWSが両者をしのぐほどとなりつつあります。

 

これはAmazonがECサイトの運営だけにとどまらなかった結果ですね。AWSはネット上でのサービスなので、バイラルに広がっていくと固定費を超えて利益がどんどんと創出される状態になります。この状態になる前に、AmazonはAWSの値段を過激に安く設定していました。

 

これはアメリカの企業によくみられるのですが、その市場のリーダーになろうとする場合に、値段を安く設定し、他企業の参入を防ぎながら圧倒的に成長しようとする戦略です。これは一歩間違うと長期的な赤字が計上されますが、結果的にAWSは他の企業が参入する間もないほどに圧倒的に成長し、現在はアメリカ事業の営業利益を超えるまでに至っています。

 

ただし、AWSがこのような拡大をし、今では営業利益の稼ぎ頭になった背景には、もともとアメリカのECサイトの圧倒的な売り上げがありました。ECサイトでしっかりと安定的にお金を稼ぐことができていたからこそ、AWSでこのような挑戦を行うことができているというのは非常に重要な部分ではないでしょうか。

 

事業で何かチャレンジングな事業を行う為には、安定的なキャッシュカウ事業を確保していると結果的にそのチャレンジも成功しやすいという典型的な例になるかと思います。

これらの事業と資金調達の関係性

さて、ここでAmazonの資金について見ていきましょう。稼いだ分のほとんどを投資に回しているといったAmazonですが、実は保有する現金は着実に増えていっています。

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この現金はなぜ増加していっているのでしょうか。現金の動きを少し可視化してみましょう。するとこのようになります。

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これは現金とCF計算書の関係です。営業活動CFは事業で稼いだお金の額、投資活動CFは現金を投資に回した額、財務活動CFには自分で稼いだお金意外に資金調達をしたり、返済したりしている額が計上されます。

 

これを見ると、まず営業活動CFは毎年着実に増加していっています。基本的には投資はその範囲内で行われていますが、例えば2017年~2018年の投資活動CFは非常に額が大きい。これは先ほど出てきたホールフーズ買収の影響です。

 

ホールフーズの買収は、Amazonが一年で稼ぎだしたCFの額よりはるかに大きい額だったんですね。このような場合に、Amazonは資金調達を行って不足分を補おうとします。

日本企業の中には手持ちの資金だけで投資を行う企業がありますが、それでは投資が失敗した際に企業が一気に窮地に陥ってしまいます。

 

Amazonは大きな投資を行う際には、財務活動CFがプラスになることが多い。これは銀行などから資金調達を行っているという証拠になります。基本的な設備投資や開発は自社のお金で行い、M&Aなどの大きな金額を投資する際には銀行から調達を行う。

 

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これは企業を運営する際に非常に重要な財務戦略です。このような資金繰りは参考にできる部分も非常に多いのではないでしょうか。

 

世界No.1の企業といえども、安定的な事業を作り出してから新しい事業を生み出し、大きな挑戦をする場合には自社の現金にだけ頼るのではなく銀行の資金調達もしっかりと行う。

 

決算書を見ていくと、いろいろな面で非常に参考になる企業だなと思います。これからも成長していくであろうAmazonに注目していきたいと思います。