Finance Records

財務諸表や決算書は企業の成績表!!さまざまな分析を通して財務の面白さをお伝えします。

高い利益率はオリエンタルランドをどう変えた?資産構成から分かる企業の変化!

前回の記事ではオリエンタルランドは高い利益率を誇っていることが分かりました。

 

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実際、2007年の推移から見ると、利益率はぐんぐん上昇していることが分かります。

今回は、このような高い利益率がオリエンタルランドの資産構成にどのような影響を及ぼしているのか?について見ていきたいと思います。

 

総資産額は非常に大きい1兆514億5500万円!でも意外と固定資産ばかりではない?

 まず、BSからは「企業がそのように資金を調達しているのか、そして、その調達したお金をどこに投資しているのか」が分かります。

下記はオリエンタルランドのBSです。

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BSは右側と左側で分かれています。簡単な見方で言うとこんな感じですね。

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オリエンタルランドが保有しているはずのディズニーランドやシーの設備は「固定資産」という項目に計上されています。ここ5年の設備投資額は3000億円近くに上る事からも分かる通り、テーマパークの投資は非常に高額です。

 

ところが、大きな投資をしているはずのオリエンタルランドの固定資産比率は58%。70%はあるかなと思ったのですが、比較的小さい割合になっています。

 

原因分析:資産の比率を時系列で確認

 

テーマパークの事業は固定資産が大きくならないものなのでしょうか。これは時系列で確認すると流れがよく分かります。

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これはオリエンタルランドの流動資産と固定資産の比率を分けたもの。数字の関連性は上記の通りで、現在の58%:42%が一番右側に位置し、左側は10年近く前の比率になっています。

 

こうして見ると、2010年時点においては90%近い固定資産が、19年には58%まで低下しています。10年前は、やはりテーマパークへの投資の影響からか流動資産の比率が非常に大きいです。この比率が変化した理由は、利益率の改善によるオリエンタルランドの稼ぐ力の増加です

 

比率変動の要因は稼ぐ力の増加

 この推移はキャッシュ・フロー計算書の営業活動CFの額で確認できます。

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上の表は営業活動CF(事業で稼いだ現金の額)と利益率の関係をグラフにしたもの。利益率が上がれば上がるほど、事業で得た現金が増加している事が分かりますね。これが流動資産の比率を押し上げています。

 

テーマパークの投資は、通常やったそばから陳腐化します。なので、この稼ぐ力を増やすためには投資を継続していかなくてはなりません。BSを見るとランドやシーの設備が計上される有形固定資産において、建設中の資産が上昇している事が分かります。

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投資を続けて、稼ぐ力が増え、そのお金を更に投資に回しても、現預金は増えている。オリエンタルランドは稼ぐ力がついてきた結果、キャッシュリッチに変貌していたんですね。

 

このような関係性は、当然ながら資金の調達方法にも大きく影響を及ぼします。

今度はBSの右側を見てみましょう。

 

BSの資金調達サイドの見方を確認

 詳しい説明をする前に、BSの右側の基本的なルールを確認します。資金調達の方法は大きく3つです。「①銀行で借りたり社債を発行したりする」「②投資家から広く集める」、そして「③自分で稼ぐ」です。

 

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①は負債②は純資産③は純資産の中の利益剰余金にそれぞれ計上されています。

それぞれの特徴を簡単にまとめておきます。

  

3つの資金調達の特徴

①の銀行や社債の発行による調達は、実績が必要になります。銀行が求めることは「元金と金利を確実に返していってもらうこと」なので、安定していない企業には大規模な貸し付けはしません。一方、テーマパークにように数年かけて建設を行い、そこから何年もかけて投資額を回収していくモデルに対応できます。

 

②の投資家から集めるというのは、投資家が「投資すればリターンが大きい!」と思ってもらう必要があるので、そもそもビジネスモデルが優れている必要があります。また、銀行などの借り入れに比べて配当や短期的な業績の改善を求めるので、コストが高いという側面もあります。

 

③は、売上が伸び、利益率も高いと増加します。ただ、利益率というのは簡単に上昇するものではないので、改善には大規模な投資やコストコントロール、ビジネスモデルの見直しなど、資金と時間が必要になります。

  

このように、それぞれ視点の違うプレーヤーから資金を調達し、あるいは自分で稼ぎ、投資を行い、回収していく。その全体的な流れがまず分かるというのが、大きな視点からの財務諸表の見方です。

 

さて、オリエンタルランドはどのような資金調達方法を取っているのでしょうか。

 

資金調達の方法は稼ぐ力と共に変化しつつある。

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 比率を見ると、純資産という項目が全体の76%を占めています。更に純資産の内訳を確認すると、自分で稼いだお金である利益剰余金が純資産の8割近くを占めています。

つまり、現在オリエンタルランドの資金調達方法は、自社で稼ぐという方法が最も主流だということです。先ほどのように、資金の調達サイドも時系列を確認していきましょう。

自社で稼ぐ割合の増加と共に、借入や投資家からの調達が減少

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自社で稼いだ額を示す利益剰余金は、10年の時点では36%ですが、利益率の上昇に伴い効率的に利益を確保できるようになってから、その割合は66%と大幅に伸びています。稼ぐ力の増加と共に、自分で稼いだお金で賄うという資金調達の方法に変わってきているのがよく分かりますね。

 

では、オリエンタルランドにとって、借入や新株発行による資金の調達を行う意味とは一体何でしょうか。これは非常に単純で、自分でお金を稼ぐ以上に早く大きくお金を集めることができるという点です

 

オリエンタルランドは投資の規模によって資金調達の方法を変えている。

オリエンタルランドはこれを非常に重要視しているように見えます。10年前の2008年期の資料ですが、「新たな成長に向けた投資余力の確保の為の削減」という一文があります。

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http://www.olc.co.jp/ja/ir/library/presentations/2008/main/02/teaserItems1/00/tableContents/02/multiFileUpload5_0/link/p2009-04.pdf

 

大きな投資ができないと、企業の成長が伸び悩んでしまう場合がある。大規模な投資は企業の差別化を進め、売上や利益率の改善をもたらしてくれる可能性がありますが、手元資金だけでは不可能。そんな時に他から借りたり投資家から集めたりする。つまり、資金調達は企業の成長スピードを早めるための手段の一つなのです。

 

このことからも、オリエンタルランドが今後大規模な投資をする際には、これらの資金調達を行う可能性は十分あると思います。

 

2022年までに大規模開発が予定されている。

 

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http://www.olc.co.jp/ja/ir/library/presentations/main/02/teaserItems1/00/tableContents/02/multiFileUpload5_0/link/p2019-04.pdf

 

2022年度までの大規模開発の一覧を見てみると、ソアリン180億円の投資の他に、ランドの大規模開発750億円、そしてホテル開設315億円、シーの大規模拡張プロジェクト2500億円を予定しています。特にシーの大規模拡張プロジェクトは予算のケタが一つ違うので、社債発行などを行う可能性も高いです。

 

以上見てきたように、オリエンタルランドは投資の規模に沿った資金調達の使い分けが非常に上手です。まさにお手本のような資金調達と投資の関係性ですね。2022年までの大規模な投資までにオリエンタルランドは資金調達をどのように行うのでしょうか。今後も注目してみておきたいと思います。