Finance Records

財務諸表や決算書は企業の成績表!!さまざまな分析を通して財務の面白さをお伝えします。

識学のビジネスモデルと財務を分析。強みはコンテンツ、ボトルネックは人材獲得?

日本で開発された「識学」というマネジメントメソッドを商品として成長を続け、起業後わずか4年でIPOまで持ってきた識学。

 

その強みは、「コンサルティング後のサービス設計までしており、生涯顧客売上が伸びやすい」「従業員ではなく社長に対するコンサルなのでフィーが高い」「学問である為、開発者以外もサービスを提供できる」という3つだと思います。

 

そして、その強みを生かした結果、その売上は大きく成長し、サービスを受ける企業の累計数も順調に伸び続けています。

 

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https://global-assets.irdirect.jp/pdf/tdnet/batch/140120190221480427.pdf

今回は、そんな識学という企業の損益構造とビジネスモデルを分析したいと思います。

先にお伝えしておくと、現在最新の識学の財務諸表では営業利益率20%、税引き後純利益10%以上を獲得しています。 

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コンサルティング会社の営業利益率は各社かなりバラバラですが、これは高収益な体質の一つと言ってもいいかもしれません。

HPから確認できるサービス内容はこんな感じ

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識学のHP(https://corp.shikigaku.jp/service)を確認すると、サービス内容はこのような感じです。しかし、これだけではイマイチ分かりづらいかと思います。

このサービス内容で分かることは、「識学はマンツーマンのサービスである。」「そのトレーニング期間は約3カ月程度である」ということ。

そして、それ以外にも複数のコンテンツを用意し、3か月間の講習を終えても継続的にサービスを提供できる環境を整えているということです。

 

識学の売上との関係は下記のような図にまとめられます。

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このように見ると、識学は、『識学』というコンテンツを様々な形に変換して、企業経営者に対してサービスしている企業であるということが分かります。

 

損益構造とビジネスモデルは連動する

 

現在識学がメインで提供しているサービスはマンツーマンセッションで、このサービスには人件費がかかります。識学の財務諸表には、その人件費がどのように反映されるのでしょうか?

講師の人件費は売上原価に。売上高-売上原価=売上総利益(粗利)

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売上に対して、売上原価は約10%前後。内訳は労務費、移動費、地代、外注費の4つ。この数字からは、識学の売上原価はマンツーマンセッションの人件費がほとんどであるということが分かります。後はセッションの為の移動費や、セミナー開催の為の施設利用料、その他の外注などでしょう。

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図に落とし込むと、売上と対応していることが分かりますね。

 

売上総利益―販管費=営業利益

 

ドンドン行きましょう。次にかかる費用は販管費。売上を上げるために間接的に必要になる費用です。

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この販管費は売上の66%かかっていますね。今期の販管費の中身はまだ開示されていませんので、前年、前前年分の中身を確認してみたいと思います。

 

中身を確認すると、一年間で金額が大きく伸びているのは給与と広告費の2つ。

 

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この給与手当は何の職種のものかの開示はされていませんが、現在募集している識学の職種を見てみると、コンサル、新規事業、テレアポ、マーケティング、システムエンジニアなどの募集がかかっていますのでこのような職種に対するものだと思います。

 

そして、もう一つの大きな費用である広告費ですが、これは「社長が見るSNS」を中心に広告をかけているようです。

 

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識学の財務諸表から推計すると、人件費や役員報酬は売上の約30%以上、広告は15~20%になっています。後はもろもろの費用が掛かり、販管費率は売上の約66%。現在識学が資金を集中的に投資している先は「ヒト」と「広告」であることがよく分かりますね

 

この結果、営業利益は22%となっているようです。

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しかし、ある意味非常にシンプルなモデルになっているのにも関わらず、何故識学はこのように高い利益率を得ることができるのでしょうか?

その理由の一端を探るために、識学のユニットエコノミクスを計算したいと思います。

 

識学のユニットエコノミクスを確認

 ユニットエコノミクスは、非常に簡単に言うと、「集客コストはいくらくらいか?リピート率はどれくらいか?」を測る基準です。企業経営において、安定的に拡大する為には広告で集まる新規顧客だけでなく、リピート客が必要です。

 

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https://global-assets.irdirect.jp/pdf/tdnet/batch/140120190221480427.pdf

これに対する識学の開示情報は、新規導入社数に対して、そのルートは紹介と紹介代理店が70.8%。そして、リピート率が54.9%であると書かれています。

 

顧客獲得にかかった費用と、その顧客から得られる売上を計算

この率はいいのでしょうか?それとも悪いのでしょうか?それを測る指標がユニットエコノミクスのですので計算していきたいと思います。 

 

まず新規顧客は2018/02で約300社。これに対し、広告費は約1億2027万8千円計上しています。ということは、一社当たり獲得するために掛かった費用は40万円近くになります。

 

 

これに対し、リピート率が50%だとすると、2018/02時点で2017年に獲得した企業約150社のうち、半分の75社は顧客として残っていますので、300社と合わせて375社にサービスを提供したとします。2018/02の売上は7億5502万3千円でしたので、1社あたりの売上はザックリ200万円ほどになります。

 

 ユニットエコノミクスは、この二つを割り算することで得られます。

非常にシンプルな計算ですが、ざっくり言うと、識学は現在40万近くかけて獲得した顧客から200万円ほどの収入を得られている事になります。ので、200÷40=5という指標になりました。

 

集客コストの5倍のリターンを得られている状態であるということです。

通常、この指標が3を超えると「優秀なユニットエコノミクスだね」と言われることが多いので、この指標は非常に優秀なのではないかと思います。

 

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ボトルネックになり得る部分は「人材」?

 広告から獲得できる顧客という意味では、費用対効果は高いことが分かりました。他に考慮しなくてはならない部分は、『識学』を提供できる人材の確保です。

 

『識学』は「学問である為、開発者以外にもサービスを提供できる」と書きましたが、実際にはまだまだ習得が大変である側面があるようです。識学の有価証券報告書ないには、「3か月で講師の教育が完了できるプログラムを構築済み」という内容の記載がありますが、実際に大きく売上を上げているのは『識学』を深く習熟した取締役2人(両者2人で売上の35.4%)のようです。

 

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https://www.matsui.co.jp/market/stock/ipo/2019/pdf/IPO_70490_03.pdf

この事から、識学が成長する際にボトルネックになりそうなのは、『識学』という強いコンテンツを高い水準で提供できる人材の数ということになるかもしれません。

 

また、識学はパートナー制度や認定講師制度も設けており、『識学』というコンテンツを拡大していくにあたって、このような制度も積極的に利用していく事にもなるのかもしれません。

 

これを効果的に活用できれば、人件費をかけずに識学を拡大できるというメリットがありますが、やはりこの場合にも、代理店や認定パートナーがどれだけ高い品質で『識学』というコンテンツを提供できるのかが鍵になってくるのではないでしょうか。

 

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さて、識学のビジネスモデルと識学の財務諸表を合わせて分析してみました。

強みはやはり『識学』という強いコンテンツであり、一方今後弱みになりそうな部分は『識学』を使いこなす講師陣を確保できるか否かということになりそうですね。

 

 

このように、ビジネスモデルと損益構造を分析するとより深い企業分析が可能となるかと思います。自社で何か強力なコンテンツを保有している場合、識学を見ておけば自身にも有益な発見があるかもしれません。

 

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