Finance Records

財務諸表や決算書は企業の成績表!!さまざまな分析を通して財務の面白さをお伝えします。

ビジネスモデルや事業の良し悪しが一発で知りたければ、「ユニットエコノミクス」を見てみよう。

さて、前回の記事ではラクスルのビジネスモデルと業績について確認していきましたが、最後にラクスルの事業を確認する際の重要指標はこれでは?というお話をさせていただきました。

 

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ここから、ラクスルのビジネスを継続して確認していく際に、重要だと思われる指標を一括して計算した数値である、ユニットエコノミクスについてお伝えしたいと思います。

 

ユニットエコノミクスは、ライフタイムバリュー÷顧客獲得コストで計算

 

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ユニットエコノミクスは、簡単に言うとこの緑色の部分のこと。一人のユーザーがどれだけのお金を支払ってくれるのか?そのユーザーはいくらのコストをかけて集めてきたのか?を比較します。

 

計算式は、どれだけのお金を市はあってくれるか?(ライフタイムバリュー)÷いくらのコストをかけて集めてきたか?(顧客獲得コスト)で計算します。

 

海外の企業などではこの数字を決算書にバシッと書いてくれている事も多いのですが、日本企業では開示されていないことも多いため、自分で計算しなければなりません。

 

実際にラクスルのユニットエコノミクスについて計算してみよう

 

そのヒントになるのは、有価証券報告書に記載されているこのデータです。f:id:parrrrrao:20190227132924p:plain

(出典:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4384/yuho_pdf/S100EC24/00.pdf

これはラクスルの印刷業の顧客データ。平成30年7月時点では、年間の購入者は251,833人、そして、1回あたりの注文回数は3.64回、1件当たりの注文単価は11,572円とされています。

 

この事から、一度顧客を獲得すれば、1件当たりの注文単価が11,572円の注文を一年で3.64回受けられますので、顧客一人当たりの年間単価は42,122円と計算できます。

 

では、その顧客は一体いくらのコストをかけて集められたのでしょうか?

H30.7月期の販管費の内訳の内、広告宣伝費を見てみると、7億9740万円かけられています。そして、H29.7月からH30.7月の年間購入者数の増加額は、185,107人→251,833人で66,726人となっています。

 

ということは、一人の顧客を獲得する際に、必要な広告費は、ラスクルの場合11,950円になります。

 

一人当たり11,950円で集めた顧客が、年間で42,122円の収入をもたらしてくれています。これは、顧客獲得コスト(11,950円)に対し、顧客のライフタイムバリュー(42,122円)が3.52倍であるということです。優秀なユニットエコノミクスはこの顧客獲得コストに対し、ライフタイムバリューが3倍であることが一つの基準であると言われていますので、ラスクルのユニットエコノミクスが優秀であることを示しています。

 

ラクスルのビジネスモデルを考慮すると、見逃せないのが売上原価

 

しかし、これだけだとラクスルの事業を正確に測ることはできません。

 

ラクスルは印刷というサービスは提携企業に委託していますので、その仕入れ代が売上原価に計上されています。

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ここの費用を計算してみましょう。先ほどと同じく、有価証券報告書にその記載がなされています。

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(出典:https://ssl4.eir-parts.net/doc/4384/yuho_pdf/S100EC24/00.pdf

7,687,525千円、すなわち76億8752万5千円が仕入高に計上されています。この他に人件費である労務費、経費(内訳は発送費などです。)が計上されています。図にするとこのような感じになります。

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この事から、ラクスルの売上原価は基本的に委託の為の費用全般ということができます。

逆に言うと、売上の25%を手数料として徴収しているということですね。

 

この事を加味すると、顧客のライフタイムバリューをラクスルの利益として認識するのであれば、42,122円×25%=10,530円になります。

 

先ほど見たように顧客獲得コストは11,950円でしたので、ラクスルのみのライフタイムバリューを考慮すると10,530円となり、顧客獲得コストの方がライフタイムバリューよりいまだに大きい事となります。顧客獲得コスト(11,950円)>ライフタイムバリュー(10,530円)

 

一見すると、顧客獲得コストの方がライフタイムバリューより大きく、負けビジネスなのではないかと思ってしまいますが、これを過去数年のデータで比較すると様相が様変わりしてきます。

 

継続して時系列で比較することが非常に重要

 

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このように、2016年の7月には顧客獲得コストが多額に計上されていましたが、認知度の向上と共にみるみる減少。ライフタイムバリューも増加傾向にあります。

 

これは、ラクスルの提供するサービスが顧客に受け入れられており、顧客の定着度が高く、新規で入ってくる顧客も多いことを示しており、このような特徴は、強いビジネスモデルを構築することができている企業に共通した性質でもあります。

 

以上、強いビジネスモデルはユニットエコノミクスを確認する事でも測ることができますよという記事でした。

 

今後ラクスルの事業を確認する際には、このユニットエコノミクスについて気を付けて見て頂けると面白いかと思います!