Finance Records

財務諸表や決算書は企業の成績表!!さまざまな分析を通して財務の面白さをお伝えします。

ネット広告事業は利益幅が薄かった。財務諸表を見ると、サイバーエージェントでも税引き後利益が1%!!

さて、今回はネット広告という大きなくくりの中で3社を比較し、「どのような事業を提供している企業が一番儲かっているのか」を見てみたいと思います。

 

まず、今回比較対象に上がる3社を簡単にご紹介します。

①eMnet

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https://emnet.co.jp/

まずeMnetです。前回も取り上げましたが、韓国に親会社がある企業です。検索連動型広告などを中心に顧客の分析、広告の形態提案などを主な業務としています。

 

②fringe81

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http://www.fringe81.com/

カッコいいHPですね。こちらはFringe81という企業で、2017年にIPOした企業です。

「様々なキワ(最先端)を開拓する」ということをモットーとし、スマホ広告やアドテクノロジー、HRテックなどの領域に進出しています。

 

③サイバーエージェント

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http://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/sCL4/jzzk/lgJw.pdf

3社目はサイバーエージェント。広告業も行っていますが、その他にも様々なコンテンツを配信している現在日本で最も大きなネット広告の企業です。

 

これらの企業のモデルを比較してみて、実際にどの企業がどのような特色を持っているのかを比べてみたいと思います。

 

ビジネスモデルは「広告単体」か「広告+複数事業」

 まず、この3社のビジネスモデルは、大きく分けて「インターネット広告専業」と、「広告以外の複数コンテンツの提供」の二つに分かれます。

 

eMnetが「インターネット広告専業」、他2社が「複数コンテンツの提供」ですね。

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https://ssl4.eir-parts.net/doc/7036/ir_material_for_fiscal_ym/54482/00.pdf

eMnetが上記のように広告を提供する企業と広告を発信したい企業の間に入って広告の効果を最大限増加させるためにサービスを行っているのに対し、

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http://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/EKpj/RGR6/Hmt2.pdf

 Fringe81やサイバーエージェントは広告だけでなく複数の事業を持っており、それを提供するというモデルになっています。インターネット広告は業界全体で非常に伸び率が高い中、広告だけではなく、周辺事業を伸ばしていこうとしている企業が多いような印象を受けます。

 

では、さっそく財務諸表から各社の違いを見比べてみましょう。

 

まずはその会社の「事業で得た利益」を表す、営業利益まで見てみましょう。 

営業利益までの損益構造

 

1社目は「広告専業」のeMnetです。

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売上を100%とすると、売上原価が85%、そして販管費が12%かかっています。という事は、売上を上げるためのかかる費用で売上の97%取られてしまうという事です。

 

広告事業は利益率が低い事業になっているのでしょうか。広告以外の事業も行っている他2社のデータも見てみましょう。

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営業利益は、eMnetが4%、Fringe81が3%、サイバーエージェントが5%と、営業利益自体に大きな差はありませんでした。

しかし、異なるのはその内訳。売上原価と販管費にご注目頂くと、大きな企業になればなるほど売上原価の内訳が下がり、販管費が上昇していっている点が見てとれます。

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(規模が拡大するにつれ売上原価が減少し、販管費の割合が高くなってゆく)

 

ここにネット広告事業のポイントがありまして、ネット広告事業の売上原価の大半は「媒体費」です。

媒体費とは広告元への費用でしょう。

 

つまり、売上原価の大半は、Facebook、YouTubeを擁するGoogleなどの広告枠を提供している企業に対して支払う費用です。

この費用の割合が徐々に下がっているという事は、「広告業は規模が大きくなればなるほど売上原価が安くなる」か、「広告業の売上原価に変動はない為、他事業を拡大していく事によって売上原価が相対的に減少している」かのどちらかが考えられます。

 

広告業は原価率が高い事業だが、規模が拡大してゆくと…

 

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雑なデータで申し訳ありませんが、上の二つの図はサイバーエージェントとFringe81の売上原価の内、媒体費と広告売上の比率を計算したものになります。

 

サイバーエージェントが69%であるのに対し、Fringe81は81%。このように見ると、「広告業は規模が大きくなればなるほど売上原価は安くなる」という構図が生じている事になります。

 

この事から考えると、ネット広告事業は、「規模の経済性」という、事業規模が大きくなれば大きくなるほどメリットを得やすくなるような構図が生じている可能性が高いことが分かります。

 

そして、売上原価が減少して余裕の出てきた利益分を広告費に充当するという流れが多いのかなというような印象を受けます。

 

そのように考えると、まだネット広告専業であるeMnetは、「広告をやるならeMnetが間違いない」と思わせるような何かが無ければ、価格が安いという点で勝負せざるを得なくなってくるのかもしれません。この点は今後十分注視したいところですね。

 

CA,Fringe81の、広告事業∔αのαとは?

 

その他の2企業、Fringe81とサイバーエージェントは、広告事業が成長した分他の事業に投資をしていっています。サイバーエージェントはAbemaTVを今後の投資事業の中心に置いていますが、今期は予測より事業がスケールせずに、100億円の業績修正を行っています。

 

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http://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/sCL4/jzzk/lgJw.pdf

 

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http://pdf.cyberagent.co.jp/C4751/sCL4/jzzk/lgJw.pdf

AbemaTVに対しては、経営者層がより多くの資金を投入してでも勝ちにいくような姿勢をNewspicksの記事で見かけましたので、今後も投資を続けていくのではないでしょうか。

 

 

一方、Fringe81は、当然ながらサイバーエージェントのように大資本を投資することは不可能ですが、その事業自体が非常にユニークです。企業に対してピアボーナス[i]を導入するためのサービスである「Unipos」を提供しています。

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https://unipos.me/ja/

このUniposは社員に毎週ポイントが付与され、そのポイントを送ると送られた社員にポイント×○○円という風に実際に報酬に代わるような制度設計になっています。

 

ただ褒める、というような文化ではなく、その企業の文化や考え方に対して利益を及ぼすような行動をとると実際に報酬になって返ってくるという非常に新規性の高いサービスを提供しているという意味では、Fringe81は大企業にはないサービスを提供している面白い企業であるということができるかもしれません。このFringe81は個別企業分析でもう少し深く分析してみたいところですね。

 

 

振り返り

 

最後に、簡単に振り返りをして今回の記事を終えたいと思います。

eMnet

 

まず、「ネット広告専業」であるeMnetは、まだ2018年に上場したばかりの新興企業という事もあってか、売上原価の割合が非常に高かったです。これは、「媒体費がまだ高い。加えて韓国にある本社に支払うロイヤリティーが重い。」ということが理由かと思います。

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しかし、ネット広告自体はスケールしたとしても依然として媒体費が重い事業です。(売上が10倍以上のサイバーエージェントでも売上の7割近くが媒体費)

今後ネット広告の市場は増加していくでしょうが、それだけではなく、別の事業を増やしていくという方向性が取られていくのではないでしょうか。

 

 

Fringe81

 

こちらも2017年にIPOした新興企業ですが、eMnetに比べると既に事業を多角化させているような印象があります。

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その多角化させている中でもUniposというサービスは非常にユニーク。この事業がスケールしていくと、非常に面白い企業になっていくかもしれません。

 

 

サイバーエージェント

 

こちらは、日本有数のネット広告企業らしく、広告売上に比して媒体費が最も低く抑えられていました。

しかし、そのような企業でも媒体費比率は70%近くになっています。結果として、利益率が高くなりやすいゲーム事業で高い利益を確保していても、トータルで見ると営業利益率が5%代と、思ったより利益の薄い結果となっています。

 

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最終的に、税引き後利益は生じているとは言え、売上の1%程度しか残らないことになっている、利ザヤの薄い事業になっていることが分かります。

 

以上、3社を分析してみると、「ネット広告事業は利益幅が薄いビジネスである事が多い」ことが分かります。

この事を認識した上でネット広告事業を見てもいいのかもしれません。それではここまで読んでくださってありがとうございました。

 

同じように同業他社比較をしている記事はこちら。

 

 

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[i] 経済的報酬を同僚に送る権限を従業員に一部委譲し、日頃の仕事の成果や良い行動を評価し、従業員同士で報酬を送り合うことができる仕組み。ピアとは、「仲間・同僚」を意味する。とあります。(https://hcm-jinjer.com/media/contents/b-contents-hitoteku-unipos-180110/