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上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

81歳でIT企業をIPO!?旧態依然の卸売業に風穴を開けるMマートの財務諸表とビジネスモデルについてレビュー!

Mマートは2018年にマザーズ上場した新興企業です。社長の御年なんと現在83歳。64歳で未経験のIT業界で起業し、81歳で上場を果たされた鉄人です。

 

この企業は、「古い体質の業界ほどネットの力によって革新的なサービスを出すことができる」「マーケットプレイスは改善し続けるために自社で運営する方がよい」「自社のことだけを考えるのではなく、大局的なものの見方が必要」という事を教えてくれます。

 

もともと飲食店を経営されていたようですが、Mマートは飲食のBtoBに特化したマーケットプレイスとなっています。

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https://www.m-mart.co.jp/

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https://www.m-mart.co.jp/search/cate.php?cate=1

よく見ると、肉の単位がキロ単位になっています。がっつりと卸売り業者のECサイトという感じですね。

 

そんなMマートですが、「卸売りは不況」という声もどこ吹く風、毎年前年比120%近くで成長を続けています。

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では、どのようなビジネスモデルで、上場まで果たすことができたのでしょうか。分析してみましょう。

 

Mマートのビジネスモデル

まずは気になるビジネスモデルを覗いてみましょう。

以下の画像はすべて (http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS02975/698e293f/785d/4c23/9ff4/217c35d4119c/140120180223476730.pdf)の物です。

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Mマートは、買い手と売り手の間に入り、取引の円滑化を行うマーケットプレイスです。買い手と売り手で取引が成立したら、配送や決済などは取引締結者で行うようです。

 

BtoCであれば配送や管理などもマーケットプレイスが行いますが、企業同士の取引なので、そのような雑務を請け負う必要が無いのでしょう。

 

場を提供することに専念しているため、「販売高あたりいくら」という高額な手数料を徴収しない代わりに管理コストが少ないというシステムになっています。インターネットの力で中間の無駄を徹底的になくすことによって、効率的なビジネスを展開することができているようです。

 

しかし、このような「場の提供」のみでは顧客を囲いこむことはできませんよね。買い手さんが売り手さんと結託して、Mマート外で取引してしまうかもしれない。

 

しかし、実はMマートはこのような「直接取引」は、むしろ奨励しているのです。

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(http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS02975/698e293f/785d/4c23/9ff4/217c35d4119c/140120180223476730.pdf)

これはMマートの特徴をまとめたもの。特徴として、「売り手企業は出展料を支払って商品をサイトに掲載の上販売。買い手企業との、直接取引が可能。となっています。

 

これは社長が、長く飲食店を経営していた際の原体験が影響しているよう。

「数か月同じものを仕入れると必ず数%値引きしてほしいという話が出ます。そういった融通が利かなければ、流通のBtoBは成立しません。」

「売り手もリピーターをつかむためには、買い手の値引き要求に応じ、直接取引しなければならないのです。」

https://signifiant.jp/articles/mmart-ipo-2/

 

と社長が述べる通り、商習慣を熟知した社長だからこそ取りえた決定なのでしょう。

 

自社の都合だけを考えているとこうはいかないかもしれません。実際、Mマートの買い物かごから買われる率は全体の10分の1なのだそう。自社のことだけを考えると、「自分が集めた顧客なのだから、そこで勝手なやり取りをするな」となってもおかしくない。

 

そこを、もっと大局を見て、業界全体の分母が大きくなれば結果としてMマートの売上は増えると言い切る姿勢が非常に印象的です。新しくIPOするような経営者の常識は、もしかしたらこのようなものなのかもしれません。

 

Mマートは儲かっているのか?

さて、このようなビジネスモデルで、売上は伸び続けています。この企業の財務はいったいどのようになっているのでしょうか。

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売上が100%とすると、給与や家賃などに売上高の79%の費用が掛かって、最終的に13%の純利益が残ります。

 

これが高いかどうかを確認するために、業界平均を調べてみましょう。

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http://industry.ediunet.jp/choice/521/

卸売業の平均的な経常利益率はなんと1.49%。これに対し、Mマートは20~21%の利益率を保っており、非常に高収益な体質であるという事が分かります。

 

飲食の卸売業のように非常に古い業界にこのようなインターネットの分野を持ち込みスケールさせていった結果、非常に高収益な体質になることができたという事がよく分かります。

 

では、もう少し詳細を見ていきたいと思います。

まず売上から見ていきましょう。

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Mマートの沿革と流通総額です。Mマートは、Mマートだけでなく、食器の卸売りサイト「Bnet」、新鮮野菜の直送「アサトレ」、規格外のお米のオークションサイト「チューオク」、その他複数のサイトを運営しています。

 

マーケットプレイスは一つのサイトのみ持っている企業が多い印象でしたが、このMマートはサイトを増やしていくごとに流通総額が増加していることが特徴的です

 

この市場の開設とともに流通総額が成長しているMマートですが、売上の方法は大きく分けて二つ。

 

業者がその店舗ごと出店する場合には月額制の「出展料」を、店舗ではなく、食材のみを出品する場合には出展料が無料の代わりに出来高制の「販売料」を徴収する仕組みです。

 

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Mマートは「出店側」のビジネスも「出品側」のビジネスもともに順調にスケールしていっていますが、取引状況が活発なのは断然Mマートのようです。

 

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Mマートは、「売り手側の月額料金+販売高の1%」が売上となるビジネスモデルです。このことから、取引がどんどんと活発になるだけでなく、売り手にとって魅力的な市場になるようにする必要がありそうです。

 

しかし、実際にMマートが取り入れているのは「買い手側に品質・満足度関するアンケート」「1年継続した後のシステム利用料の10,000円の値上げ」など。

これは売り手に対するクオリティを担保するためのようです。

 

「売り手側から利用料を取っているのに、売り手に対しての負担が大きいのではないか」と当初は思いましたが、Mマートの顧客はどちらかと言うと「買い手」側。

売り手のクオリティが低下し、買い手が他に流れてしまうと必然的に取引量が低下し、取引総額が低下してしまう。買い手側がMマートに満足してくれるからこそ成り立つビジネスモデルなのです。

 

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結果として高いクオリティを保つ卸売業者が増えたのでしょう。買い手側はMマートが営業を掛けなくても年々増加しており、毎年10,000店以上増え続けています。

 

もちろん、この買い手の増加は売り手側のメリットにも直結します。売り手は出店すると多くの買い手の目に留まるようになるので、新規顧客の開拓も可能です。食品は生ものですので、売り手側にとって販売チャネルが増えることは魅力的でしょう。

 

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また、Mマートはビッグデータを収集していることから、今後売り手にはこのビックデータを活用してコンサル業務に乗り出していくこともあり得るでしょう。そうなると、今後より高い月額収入も見込んでいくことができるでしょう。

 

さて、こんなMマートを運営するために必要な費用で、最も多額なものが「営業費用」でした。

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この営業費用を簡単に確認しておきましょう。

 

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給与が最も多額ですね。Mマートはサイトを自社で作り、毎日改善してユーザーを増やしているという側面があります。今後ビックデータを活用していくとすると、より多くの人材が必要になってくるでしょう。

 

では最後に、Mマートの成長戦略を確認して分析を終えたいと思います。

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まず成長可能性。マーケット規模自体は204兆円あると推定されています。これに対してMマートが現在取り扱っている販売高は50億円ほど。

Mマートは前述したように、マッチングのみを行い直接取引を認めているため、実際にMマートが絡んだ取引は500億円程度だと推定されます。204兆円ある中の500億程度ですので、今後まだまだスケールしていく余地はありそうに思えます。

 

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そんなMマートの成長戦略は、当面は売上の増加のよう。その為にサイトを新設したり、ビックデータの運用に力を入れていくようです。

 

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その投資を行うための原資は2018年末時点では、自社の事業からなる営業活動CFで創出できていますが、6か月後には法人税の増加などが要因となって十分なCFが創出できていません。

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この営業活動CFが今後どのように推移していくのでしょうか。Mマートのビジネスモデルは買い手が流入しやすく非常に強固だと思いますが、増加する利益に係る法人税に引っ張られて、事業規模が縮小していかないかが少し心配です。財務活動CFからしっかりと資金調達はされていますが、今後より多くの営業活動CFを創出することができるかが注目されるかと思います。

今後もMマートは要注目ですね!。

 

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