Finance Records

上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

情報製造小売業の道半ば。国内ユニクロを伸ばすより海外を伸ばすべき?国内市場が飽和状態のユニクロ、学ぶべきはInditexか。

ファーストリテイリングの2019年のQ1の財務諸表が公開されました。 

全体的には、「利益はしっかりと出ているものの、前年度に比べて利益は減少」という結果になりました。その要因は主に国内ユニクロなのですが、暖冬であるという要因はあるものの、「国内に成長の余地はもうあまりなく、海外をもっと伸ばしていくべきなのではないか?」という結論に至りました。

 

以下、詳細を見ていきましょう。 

2019Q1は利益が出ているものの昨年に比べて減益

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https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20190110_results.pdf

上の2つは今期のファーストリテイリングの経営成績です。

前年と比べると、3カ月で売上自体は300億近く伸びたものの、売上総利益が売上比率で1%減少し、販管費が売上比率で1.3%増加しました。結果、営業利益の2.3%の減少につながっています。

 

という事は、減益は「売上総利益率の減少」「販管費の上昇」にあると分かります。一体その原因は何でしょうか。詳しく見ていきたいと思います。

売上から営業利益までの変動要因を分析

 

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https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20190110_results.pdf

営業利益までの変動要因は上の図の通り。

売上の増加は、海外ユニクロ、GUの増加です。一方、国内ユニクロは売上が下がっています。今期も、海外ユニクロは相変わらず絶好調。加えてGUはいまだ減益ではあるものの、前年下期に比べて回復基調です。これに対して国内ユニクロは減収減益になってしっています。

今回のファーストリテイリングの減益の要因として、注目すべきは国内ユニクロですね。

 

減益は国内ユニクロが主な要因

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https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20190110_results.pdf

 

国内ユニクロの数字を見てみると、売上総利益率、売上高販管費比率がどちらも減少しています。では、この要因を確認していきましょう。

 

国内ユニクロの売上総利益は暖冬による値引きが原因

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まず売上総利益。

国内ユニクロの資料について見てみると、売上総利益率が減少した要因は「①為替レートの円安による原価率の上昇②暖冬による販売苦戦からの値引き販売。」の2点が挙げられています。

 

実際、国内ユニクロの客数と客単価を見てみると、Q1の内、10月と11月は客数と客単価ともに減少しています。f:id:parrrrrao:20190116110839p:plain客単価がこれだけ下がっているのは重衣料が売れなかったからでしょう。このようなデータを見ると、確かに「暖冬による客足減⇒値引き販売による客単価減」という構図が確認できます。

 

ファーストリテイリングは、このような客足の減少に敏感に反応します。在庫を焼却処分せずにすべて売り切るという方針からでしょうか、在庫が残りそうな場合には早々に値引きするような印象があります。

この値引きが売上総利益率にマイナスの影響を及ぼしていますね。

 

販管費比率は物流やIT費用への投資が要因

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次に販管費率を見ていきましょう。増加していた要因の内、80%が物流費、その他経費、原価償却費が占めています。

 

物流費

 物流費の増加要因は、在庫の滞留による倉庫費の増加、加えてEコマース関連の物流費の増加があげられます。

ファーストリテイリングは、前期において在庫が非常に多かったのですが、この事と倉庫費の増加は無関係ではないでしょう。

 

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前期末時点では上記の図のように売上の伸びに比べて在庫が急激に伸びていたのですが、この在庫が滞留してしまっています。

 

この他に、Eコマースの物流費も増加しています。

とは言え、無人工場の開発により物流費用は大幅に抑えることに成功しています。

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https://www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/presen181009_FR-Daifuku-ConcludeStrategicGlobalPartnership_jp.pdf

これによって、1件当たりの物流費は減少していますので、ECサイトの物流費の工場は、単純にECサイトでの注文数の増加によるものでしょう。

店舗受取の比率がどんどん増えてきているようですし、ここからこの物流費が大幅に増加することは少ないのではないでしょうか。

 

その他の費用(IT関連)

 その他の経費であるIT投資に関しては増加は全く問題がないでしょう。ファーストリテイリングはRFIDなどの投下により、商品の在庫管理だけでなく、「どの商品がどれだけ手に取られ、購入されたか」などの管理を行うことができるようになっています。

今後のファッション業界の潮流はそのような「顧客データの管理、分析」が非常に重要になってきますので、そこに関する投資は健全なものとして捉えられるべきだと思います。

 

ファーストリテイリングでいうとGUの「STYLE STUDIO」などに投資しているように、今後IT関連への投資はもっと増えていく事になると思います。

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https://www.ozmall.co.jp/omotesando/article/15953/

 

さて、国内ユニクロやIT関連に関する情報を見てきました。海外ユニクロはいまだに好調、GUも商品構成転換により回復基調にあると思われますので、今回は詳細には触れないでおきましょう。

ここからは、今後ファーストリテイリングはどのような方向に進んでいくのか?」について少し考えてみたいと思います。

 

今後ファーストリテイリングは海外が中心になっていく

 

今回の決算においてはご覧いただいた通り、国内ユニクロの減益によって全体の業績に影響を及ぼしました。これを受けて、近年大きなヒット商品が表れてきていないことを理由にしている記事も見かけました。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39842660Q9A110C1TJC000/?n_cid=SPTMG002

 

この理由も十分あり得る所でしょうが、実際には国内ユニクロのキャパ自体がもう限界なのかもしれません

日本のアパレル市場はファストファッションを好む「ローワー」、セレクトショップや準ファストファッションの中価格帯「ミドル」、ラグジュアリーなどのハイエンドブランドを好む高価格帯「アッパー」に分かれているそうですが、

世界では「ローワー」のボリュームが多いのに対し、日本では「アッパーミドル」の市場が世界的に見て大きいそう。

 

このような市場からか、国内ユニクロが「好調だ」と言われるような時期においても、実は国内ユニクロの成長率は、海外ユニクロと比べて大きくはありません。

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このように、5年間の成長率でいうと国内ユニクロは120%ほどになります。

そして、日本国内における「ユニクロ」という名の浸透性。もはや日本人であれば一着はユニクロ製の服を持っているのではないかというレベルです。

 

ここから言えるのは、日本国内の市場は、ほぼ飽和しているのではないかという事

もちろん、上記記事の中の

こうした状況を柳井氏は一番理解している。柳井氏は19年の新年のメッセージで、新しい価値を生み出すイノベーション(技術革新)の重要性を説いた。世の中の変化を捉え、失敗を恐れず愚直に挑戦することを強調した。トップ自らも行動に移している。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39842660Q9A110C1TJC000/?n_cid=SPTMG002

 

という話は間違いないのでしょうが、この姿勢は柳井社長のスタンダードで、国内ユニクロの伸び悩みという側面から出るものではないように思います。

学ぶべきはInditex

 

  このような状況において、参考になるのはZARAを率いるInditexです。この企業はスペイン発の企業ですが、スペインも国土や人口、経済規模などから国内だけの売上に依存する姿勢は早々に捨てています。

それがよく分かるのが店舗数の推移です。ある時を境に海外店舗が伸びる一方、国内店舗はむしろ減少傾向にあります。

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Inditexが強いのは、このような海外店舗を出店するスピードを維持したまま店舗ごとの収益性を保っている点にあります。通常、店舗の出店をし始めた際には立地条件などを検討して収益性の高い土地に出店しますが、これだけ多くの店舗を出店し続けているとそのような条件のいい土地以外にも出店せざるを得なくなるものです。

 

それにもかかわらず、Inditexはこの店舗の増加に合わせて売上や利益などの収益性を維持し続けています。

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前期において海外ユニクロの売上が国内ユニクロの売上を超えた時を境に、今後ファーストリテイリングもこのような方向性に進んでいくような気がします。ファーストリテイリングがInditexを見習うとすると、このような点だと思うのです。

皆様はどのように思われるでしょうか。

 

次回は、前期の社債発行により増加した現金について簡単に見ていきたいと思います。

 

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