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財務諸表をみるとFarfetchは赤字。なのになぜ「将来性がある」と言われるのか?財務的に分析!

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https://s22.q4cdn.com/426100162/files/doc_financials/2018/Q3/Farfetch-Limited-Q3-2018-Earnings-Slides-(IR-Website).pdf

 

Farfetchはなぜ「将来性がある」といわれるのでしょうか?

その答えは「優秀なユニットエコノミクス」にあると思います。そこで今回はFarfetchの赤字の中身と、ユニットエコノミクスについて見ていきましょう。

 

この図はFarfetchの損益構造。営業利益の時点で大きな赤字です。

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大きな営業損失を計上中

いったいFarfetchはどのように儲け、何に費用を使っているのでしょうか。まず売上から見ていきましょう。

売上の中身を確認

Farfetchは、マーケットプレイスの事業がメインですが、他にもイギリスの老舗セレクトショップBrown、物流サービスなど、複数の売上を持っています。

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GMVは季節性を伴って伸び続けている

GMVとは、販売額のことです。規模はプラットフォーム事業の販売高が圧倒的。物流サービスとは配送費や関税の費用をユーザーから徴収している額を示していると思います。

しかし、実際にはユーザーからの徴収以上の配送費がかかっているようで、負担はユーザーとFarfetchの両方が持つという形になっています。

  

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https://s22.q4cdn.com/426100162/files/doc_financials/2018/Q3/Farfetch-Limited-Q3-2018-Earnings-Slides-(IR-Website).pdf

この図はFarfetchのGMVから売上までの流れを示しています。これを見ると、プラットフォーム事業は自社で販売する「1st Platform GMV」と他社の商品を販売する「3rd Platform GMV」に分かれます。

この内訳は大体17%と83%のようです。

 

やはり、テイクレートを取って販売する他社商品販売の販売高が最も大きいですね。一方、自社で販売する販売額も意外と多いなという印象を受けます。

前回の記事で「Farfetchはデータ管理を重視しており、その姿勢はZOZOTOWNよりもAmazonに近い」という内容を書きましたが、ここもAmazonに似た思想であるならば、データ管理を元に利益率が高く、販売量の多い商品を自社販売しているかもしれません。

 

今後の成長に期待してみたいと思います。

 

また、Farfetchの主力である、他社の商品を売る「3rd Platform GMV」。こちらのFarfetchの売上高は、この「3rd Platform GMV」に一定割合をかけた手数料になります。

この割合をテイクレートというのですが、2017年時点でのテイクレートは32.90%。実はZOZOTOWNよりも高いテイクレートを取っていることになります。

 

これだけ見るとかなり儲かりそうなFarfetchですが、なぜこれだけ赤字なのでしょうか。

 

売上にかかる費用を見ていきます。

Farfetchの各費用を確認

売上原価をチェック

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まず売上原価

まずは売上原価ですね。

先ほど、売上のメインになっているマーケットプレイスの販売高のうち、87%は他社の商品の販売だという事を書きましたが、この販売のメリットは「在庫リスクがない」という点にあります。このような業態で売上の49%が売上原価というのは通常考えにくい。

 

実際、同じような事業形態をしているZOZOTOWNは自社商品を販売している直近の決算でも売上原価率は9%しかありません。その中身は一体何でしょうか。

 

残念ながら具体的な数字での開示はありませんでしたが、送料、関税、クレジットカード手数料、梱包費などが含まれるようです。売上に物流サービスの売上も計上されていましたが、明らかにこの額以上の額が売上原価に計上されています。

 

送料や関税は、Farfetchのように世界的なビジネスを行っている企業には、かなり重い負担になるのではないかと推測されます。Farfetchは世界中の実店舗と契約を結び、販売者と近い在庫場所から商品を届ける、というモデルを取っているのですが、それでもかなりの負担にはなるでしょう。

加えて自社販売の仕入れ原価があります。卸売りの原価率は通常かなり高くなりがちです。高い売上原価はこのようなところから来ているのでしょう。

 

まとめると、Farfetchの売上原価は、「世界中に配送する為の配送料や関税」と「自社販売の商品の仕入れ原価」の二つがメインだと推察されます。

配送料は、ここからFarfetchがスケールしていけば、ユーザーから近い販売店が現れる可能性があるので下がっていくかもしれません。

しかし、当面は配送料の問題は、Farfetchの大きな壁になるかもしれません。

 

販管費は非常に多額

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販管費は売上以上の額

次に販管費です。なんと、販管費は売上比率で109%。Farfetchは売上以上に販売の為の費用を使っています。販管費の内訳は一体何でしょうか。内容を確認していきましょう。

 

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販管費は年々増加中

一般費用が圧倒的に大きいですが、まずは他の費用を見ていきましょう。まず安定して多額の費用が掛かっているのは一番下の「デマンドジェネレーション費用」です。デマンドジェネレーションは簡単に言うとマーケティング費用のようなもので、見込み客の獲得、育成、顧客化にかかる費用を一括してそう呼ぶようです。

この2018/Q3もFarfetchはデマンドジェネレーション費用に多額の費用をかけており、3ヵ月で24億円投資しています。

 

次に下から二番目のテクノロジー費用。こちらはFarfetchの事業の根幹を担う投資といえます。

こちらは2016/Q1から徐々に増加し続けていっています。技術スタッフの費用、ソフトウェアやインフラ構築の費用、世界に3つある巨大なデータセンターへの費用もこちらに計上されるようです。

ちなみに、この費用はStore of the futureのような資産化される投資の費用はまた別のようです。この辺りはキャッシュフロー計算書を分析するときに確認していきたいと思います。

 

そして、今期激増した株式報酬費用。株式報酬費用は、日本では一般的に役員クラスが受け取る「現金ではなく株式で受け取ることができる報酬」ですが、アメリカでは近年従業員にもこの形態で支払うパターンが増えてきており、Farfetchもこのパターンを取っているようです。

 

これからFarfetchの株価がどれだけ上がっていくのを予想することは難しいですが、これから上がるという期待をもって働ける従業員は幸せかもしれません。

 

最後に一般費用。こちらには、テクノロジー以外の従業員の人件費が計上されているようです。2018年上半期時点での従業員数は3009名(今はもっと多いでしょう)で、テクノロジー関係の人件費が1/3。逆に言うと、2/3の人件費がここに計上されています。

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一般費の増加要因として挙げられている従業員数

一般費は4半期で63億円ですので、これ以外の費用も計上されているとは思いますが、人件費はかなり多いと思います。この辺りの詳細は、今後上場後初めてのアニュアルレポートが発表されると詳細が開示されるかもしれません。

 

いずれにしても、Farfetchの費用として大きいのは発送費、テクノロジーの開発費、人件費などが大きいようです。

 

売上原価や販管費について見ていきました。これらの投資は全てFarfetchのサービス拡充、ひいては売り上げ拡大の為の投資といえます。この投資はうまくいっているのでしょうか?

これを確認するための指標として有用なのが、ユニットエコノミクスという指標です。

 

投資が上手くいっているかはユニットエコノミクスを確認

ユニットエコノミクスは、LTVとCACの2つの指標が必要です。LTVとは顧客一人が企業に払うトータルのお金。CACはその顧客を獲得するために企業が払う費用です。

 

マーケティングやサービスの充実は、言ってしまえばユーザー獲得&継続利用してもらう為の費用です。そして、どれだけ高いお金をかけても、最終的にその獲得したユーザーがそのサービスに使う金額が、獲得コストを上回ればいいのです。

 

ユニットエコノミクスはこれを図る指標です。LTV/CACなので、ユニットエコノミクスが1を超えていれば投資した価値はあることになります。

 

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ユニットエコノミクスは赤字でも事業の将来性を計れる指標

Farfetchの開示している情報によると、2015年に獲得した顧客は3年後のこの指標が2.71。獲得コストの3倍近くの収益を上げることができています。

 

各年代の獲得顧客で見ると毎年ユニットエコノミクスが上昇していくところを見ると、Farfetchのサービスは一度利用されると非常に離脱率が低い。このことから、Farfetchは顧客を獲得すればするほど収益がよくなっていく体質にあるといえます。

 

その為、最終的な結論になってしまい大変申し訳ありませんが、この大きな営業損失はFarfetchにとって悪くないといえるのではないでしょうか。

 

以上、Farfetchの損益について見ていきました。皆様はどう思われたでしょうか。

次回からはFarfetchの資産とキャッシュフローを見ていきたいと思いまます。

 

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