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上手く行っている企業は何が違うのか?目標に届かなかった理由は何だったのか?様々な企業を記録し、財務分析を発信します。

ZOZOTOWNというよりむしろAmazon?Farfetchのビジネスモデルと強みをレビュー

 Farfetch(ファーフェッチ)という企業をご存知でしょうか。
 

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https://www.farfetch.com/jp/

ファッションに特化したECサイトです。日本でいうとZOZOTOWNを最初に思い出される方も多いと思いますが、強みを調べていくと、むしろ私にはAmazonに近いように思えてきます。

以下、Farfetchについて見ていきましょう。

 

Farfetchは2013年にはファッション誌「Vogue」を発行する「コンデナスト」から、2017年には中国でAlibabaに次ぐEコマース企業であるJD.comと提携を行っています。

 

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(https://twitter.com/JD_Corporate/

JD.comの筆頭株主は中国を代表する「テンセント」。Farfetchは多くの中国人が使っている[We Chat]を販促に活かしています。

 

また、主力製品のオンライン販売を行わない方針であるシャネルも、具体的な金額は公表していないもののこの企業に出資を行っています。 

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https://www.businessoffashion.com/articles/fashion-tech/chanel-strikes-farfetch-deal-to-augment-boutiques

このように簡単にFarfetchを取り巻くニュースを見てみると、世界的な企業にも認められた、非常に有望な企業であるように見えます。

 

しかし、実はこのFarfetch、2008年に創設されて以来一度も黒字化されていません。

 

 

今期の損益構造も営業利益の時点で赤字を計上しています。
 

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(営業利益の時点で多額の赤字を計上)

 

このような企業が、何故高い評価を受けるのでしょうか?
その理由を探るべく、Farfetchの特徴を見ていきたいと思います。

特徴①圧倒的な成長余地がある

 まず何と言っても売上の成長性です。当然、この成長度が大きければ大きいほど評価は高くなります。

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https://d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net/CIK-0001740915/ba586dfa-feb3-4069-845e-31dd1884624f.pdf

上記はFarfetchの創業からの販売高です。右肩上がりに伸びていることが分かるかと思います。しかも、2016~2017年の伸び率は今までの成長率を上回っています。


このように成長を続けるためには企業に投資をし続けなくてはなりません。逆に、赤字だからといって投資の手を緩めてしまうとそこで企業の成長が止まってしまうのです。

 

この多額の投資の結果、Farfetchの直近の四半期の販売高は日本円で337億円。

2017年の3期の販売高が223億円でしたので、1年で4半期の売上が100億近く販売高が増えている事になります。

 

しかも、Farfetchがマーケットにしているラグジュリー業界はおよそ32兆7000億円。しかもこの業界はデジタル化がまだ未整備ですので、今後更に拡大していくだろうといわれています。

 このように、Farfetchは今後さらに成長していくだろうという期待を持たせるに十分な条件が整っているといえます。

 

②Farfetchの強みが明確 

強み1:マーケットプレイスであること。

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https://www.farfetch.com/jp/sets/men/new-in-this-week-eu-men.aspx

まずはマーケットプレイスのビジネスモデルである事です。これがなぜ強みになるのかというと、「在庫を持たなくていいから」です。


Farfetchは現在3200のブランドにおける500万以上の商品を販売しています。この中には売れ筋の商品もあれば、その逆に売れていない商品もあります。


小売店だとその商品すべてを自社で仕入れなければならないため、500万もの商品を保有しなければなりませんが、マーケットプレイスはこのようなリスクとは無縁です。

また、商品の確保をブランド側にお願いすることができるので、Farfetch自身は早く事業規模を拡大することができるという側面もあります。

 

 ブランド側にとっては国際的な販路が開けるというメリットがあります。例えば、ヨウジヤマモト。このような日本のブランドは海外でもそのデザインや品質から評価が高いのだそう。

しかし、モノがよくても、国際的なオペレーションやロジスティクスが難しい。
そこをFarfetchがサポートしてくれるので、ブランド側にとっても大きなメリットがあるのです。

強み2:服を売る企業というよりは「データを収集する企業」である。

 
Farfetchはデータエンジニアやデータサイエンティストを631人有し、多額のデータ技術に投資しています。
 

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 https://s22.q4cdn.com/426100162/files/doc_financials/2018/Q3/Farfetch-Limited-Q3-2018-Earnings-Slides-(IR-Website).pdf

 上の図は、テクノロジー関係に9カ月で31USDm(約33億円)投資している事を示しています。といっても額が大きすぎてぴんと来ないかもしれません。

例えば、ZOZOもZOZOSUITをつくる際に多額の資金を投資しましたが、その額は一年間で約45億円。このままいくと、Farfetchの投資はZOZOのZOZOSUITと同等クラスということができます。Farfetchのテクノロジーに対する投資額の大きさが分かりますね。

 

 

また、それによって得られたデータをフルに利用しているのも特徴的です。

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https://d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net/CIK-0001740915/ba586dfa-feb3-4069-845e-31dd1884624f.pdf

 

図の上にある「Marketplace」以外の「Seller Tools」「Farfetch Blak&White Solutions」「Farfetch Store of the Future」といったサービスは、全てFarfetchが、データ分析をベースとして、ブランド側に提供しているサービスになります。


例えば「Farfetch Store of the Future」は、オンライン上のデータと、実店舗への訪問データの分析を行い、店舗の販売業績改善を促進するサービスです。

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https://retailinasia.com/in-shops/farfetchs-store-of-the-future/

具体的には、異なるサイズや色が確認可能なミラーが用意されていたり、RFIDによってどの商品が手に取られたかを店舗側が把握することができるようになります。

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https://www.thedrum.com/news/2017/04/18/farfetch-has-created-operating-system-bricks-and-mortar-retail-its-new-store-the

このようなデータの処理を、Farfetchが行う事によって、消費者に新しい購買体験を提供し、店舗とデジタルを繋ぐという事を目指しています。


Farfetchのこのような取り組みは理論上のものではなく、まず自社で買収したBrownというイギリスの老舗アパレルショップ、ついでThom Browneで実際に試験的に利用された後にサービスが始まっているのが特徴的です。

 

データ分析を駆使し、解析し、そして実店舗に繋げる。

このようなデータ分析サービスを提供するマーケットプレイスは、Amazonを彷彿とさせます。Amazonは基本的にラグジュリーブランドに参入していないため、ここもFarfetchが高い評価を受けるポイントになっています。

 強み3:多くのラグジュアリーブランドを集めている

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https://d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net/CIK-0001740915/ba586dfa-feb3-4069-845e-31dd1884624f.pdf
ECサイトには基本的に[Takes Winner All(勝者が全てを獲得する)]という市場原理が働いています。ユーザーは手軽に比較検討できることを求めるため、マーケットプレイス上にブランドや商品がたくさん並んでいるサイトを利用するのです。

Farfetchは、このブランド出店数で、他のラグジュアリーブランドを出すマーケットプレイスと、圧倒的な差をつけています。


Farfetchは190か国に出荷することができる為、ブランド側にとっても販路が広がります。さらに、Farfetchはユーザーが選んだアイテムに近いものを「おすすめ商品」として提案してくれるので、自社ブランドが新しいユーザーの目に触れやすいという特徴もあります。
 

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https://www.farfetch.com/jp/shopping/men/unravel-project--item-13266360.aspx?storeid=9843&rtype=inspire_portal_pdp_generic_anon_a&rpos=4

このような特徴から、Farfetchでは3200ものブランドに受け入れられており、そのサイト上で500万以上の商品を見ることができます。これは他のマーケットプレイスと大きな差別化要因になっています。


 特徴③顧客は世界各国の若い世代

 

 また、Farfetcは顧客層が比較的若い事も特徴です。若い世代はぜいたく品を買わないといわれていますが、Farfetchの顧客の45%近くは若い世代です。(2000年代に成人になる世代をミレニアル、それ以降をジェネレーションXと呼ぶそうです。)
 

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https://d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net/CIK-0001740915/ba586dfa-feb3-4069-845e-31dd1884624f.pdf

これをFarfetchのCEOであるネヴェス氏は

「ミレニアルは(SNS全般の)フォロワーであり、同時に自分がフォローされたい気持ちも持っているので、自分の個性を表現するアイテムを探しています。車は欲しくないし、家は買うには高すぎるのかもしれない。そうなると、意外と可処分所得が残ります。ファッションで自己表現をしたいのではないでしょうか。ファッション業界の成長の85%をミレニアルが牽引しているという統計もあります。」
出典:https://www.businessinsider.jp/post-164165

と述べています。FarfetchはこのようなSNS全盛の時代背景も手伝い、時代の後押しや若者の支持を受けて拡大してきているようです。

 

ファッション業界の成長性はミレニアル世代が担っているという社長のコメントにもある通り、Farfetchの顧客層が若い世代であることはそのままFarfetchの強みとなりえます。

 

終わりに


ブランドには今までにない販路やデータ管理による実店舗の経営改善サービスを提供し、若い顧客にはラグジュアリーブランドの比較検討という今までにあまり見られないような購買体験を提供しているFarfetch。それを可能にしているのは創業当初から重視しているデータ分析の力でしょう。

 

Farfetchという企業はラグジュアリーブランドのマーケットプレイスというよりはデータ管理・分析の力を持つAmazonに近い企業なのではないでしょうか。

 

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