(https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/)
今回は「夢の国」ことディズニーランド・ディズニーシーの財務諸表を見てみます。運営する会社はオリエンタルランド。ここの売上分析を通して、今回は、「売上を細かく分解して分析すると企業の次の戦略まで見えてくる」という事を見ていきたいと思います。では事業内容から見ていきましょう。
事業内容をざっくり確認
(http://www.olc.co.jp/ja/company/segment.html)
事業は大きく分けて3つ。ランドやシーの「テーマパーク事業」ディズニーアンバサダーホテル、ホテルミラコスタ等の「ホテル事業」商業施設の運営、モノレールの運営を行う「その他の事業」に分かれています。
このようなテーマパークやホテル、商業施設を作るのは非常に多額の資金を必要とします。しかし、近年USJが様々なイベントや新規施設を次々発表して来場者数を伸ばしているように、投資を続けていかないとすぐに客足が落ち、売上の下落に直結してしまう側面を持っているというのがテーマパーク事業の特徴でもあります。
もう少しオリエンタルランドのビジネスの構造を掴んでいきましょう。その際に、オリエンタルランドの発表しているビジネスモデルが非常に分かりやすいです。
(http://www.olc.co.jp/recruit/newgraduate/s/company/businessmodel/)
オリエンタルランドは売上を「入場者数」と「客単価」の2つに因数分解しています。このように因数分解すると、売上が変動した時に、「どの指標が原因で変動したのか」という事を理解しやすくなります。
ここから、費用を引いて残った利益を新しい施設やイベントに投資するための「元手」として再投資するという循環を描いています。この辺りは先ほどのテーマパーク事業の特徴である「再投資し続けなければならない」という点ともリンクしますね。
この辺りは今後BSを見ながらお伝えしていきます。
いずれにしても、「売上を上げ、費用を抑え、再投資に回すための利益を確保する」というのがことさら重要だという非常にシンプルなビジネスモデルであるという事は理解できました。
では、オリエンタルランドはどれだけの売上を上げ、何が費用として出ていき、どれだけの利益が残るのでしょうか?確認していきましょう。
オリエンタルランドの収益構造を確認
損益構造を掴むにはPLをグラフ化する事が最も手っ取り早いです。オリエンタルランドの収益構造を図式化したものがこちらになります。
一番右側が「税引き後利益」直近のPLを見る限り、利益はしっかりと出すことができています。税引き後利益はなんと17%。めちゃくちゃ利益を残すことに成功しています。
細かい中身を見ていきましょう。
売上の中身を確認
オリエンタルランドの事業としては3つ(テーマパーク、ホテル、その他)ありますが、どの売上がメインなのか、まず売上の中身を見ていきましょう。
テーマパーク事業が全体の8割ほどを占め、ホテル事業が2割弱、残りがその他の事業という感じですね。これだけではある意味予想道理ですので、もう一歩進んで売上の8割を占めるテーマパーク事業の売上割合について見てみましょう。
ここはかなり割れましたね。アトラクションやショーは入場料のほか、イベント参加権やファストパスなども含まれていそうです。ここが半分ですね。
それ以外にも、オリエンタルランドはグッズ等の商品販売や飲食販売などでアトラクション・ショーと同等の売上を上げています。
(https://www.tokyodisneyresort.jp/top.html)
これはディズニーランドのHPの画像。ディズニーランドではパークに入った瞬間にワクワクした気分になります。まさにこのイメージ通りですよね。物語の中に溶け込んで、思う存分楽しむことができるでしょう。ディズニーランドなどではその為に現実世界の建物が見えないように工夫して設計されているとも聞きます。
このような努力によって、ディズニーランドに入った時にゲストが心から楽しめる環境を整備しているからこそ、グッズや飲食販売でここまでの売上を上げることができているのではないでしょうか。
とはいえ、ここで分析を止めてしまうと「ディズニーってすごいね!」で終わってしまいますので、少し角度を変えてテーマパーク事業の時系列売上を見てみましょう。
売上は全て右肩上がり…と言いたいところでしたが、アトラクション・ショーの売上は上昇しているものの、商品販売と飲食店販売は年々徐々に減少していっています。なぜこのような事が起こるのでしょうか?
これもデータを加えると仮説を立てることができます。上のグラフに一つデータを追加してみましょう。
チケット代の値動きを追加しました。(グラフの右側がチケット代の値段)値段の上昇とグッズや飲食の販売が反比例しているのが見てとれると思います。
更にもう一つ、来場者数のグラフもご覧ください
チケットの値段の上昇に比例して来場者数も減少しています。来場者数が減ったことによって、グッズや飲食の売上が減少したと考えることが自然でしょう。
チケット代の値上げは悪手だったのか?それとも成功だったのか?
では、ディズニーランド、ディズニーシーのチケットの値上げは悪手だったのでしょうか?そのことを確認するために、三事業の売上を合わせたトータルの売上を確認してみましょう。
実は、値上げによる来場者数の減少は大きな影響は出ていません。この時点で、オリエンタルランドにとっては値上げは大成功であるということができます。というのも、チケット代の値上げを発表する以前からオリエンタルランドが問題視していたのは「混雑感」。
ディズニーランドとディズニーシーのキャパは決まっていますので、入場者が増えすぎるとキャパオーバーになって混雑感が増し、ゲストの満足度が低下します。
価格改定によって来場者数が減ったにもかかわらず売上を維持することができているのであれば、混雑感が多少解消されてゲスト満足度も高くなるでしょう。
入場者数が減りつつも、売上が確保できている今はかなり理想的な状態ですが、また入場者数が増えれば売上は増すものの混雑感は解消できません。次の打ち手として、パークの拡張等を行っていくのでしょう。実際、そのような目で探してみるとディズニーシーの拡張プロジェクトを発見することができました。
こちらは2022年に導入の予定のようです。売上を細かく分解していくと、このような企業戦略の理由まで見えてきますね。もちろん、並行してディズニーランドとディズニーシー内にも新しい施設を作る投資は続けていく予定のようです。
(同上)
新しいイベントや施設を投下し続けてゲストの飽きが来ないようにし、かつパークの拡張も狙っていることがよく分かります。
売上の内容分析だけでかなり長くなってきてしまいました。費用の分析については次の記事に回したいと思います。今回は、「売上を細かく分解して分析すると企業の次の戦略まで見えてくる」という事がご理解いただけると嬉しいです。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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