この記事の続きです。
(http://fashionweek.com/wp-content/uploads/2015/03/zara.jpg)
(https://en.wikipedia.org/wiki/Uniqlo)(http://fashionweek.com/top-10-looks-from-zara-springsummer-2015/)
企業の体質が分かるROEを比較
売上からZARAとユニクロの戦略の違いについて見てきました。今回はROEという指標を使って少し専門的に企業の経営体質の分析を行ってみます。
簡潔に言うと、ROEは企業の経済活動をすべてカバーする指標です。
ROEは税引後純利益÷株主資本で計算される指標ですが、「借入割合」「資産からどれだけ売上を上げているか」「利益率」という3つの指標に分解できます。
この分解できるという事が、ROEの価値を高めているのです。
企業の経済活動は、言ってしまえば資金調達→投資→回収をグルグル回すこと。ROEはこの3つの活動を全てカバーしてくれます。ですので、ROEが高いという事は、その企業は経営上手という事もできるのです。
ではまず、ZARAとユニクロのROEを比べてみましょう。
ROEを横比較
ZARAの方がユニクロより一貫してROEが高いです。ZARAの方がより良い財務体質を持っている可能性があるという事になります。
では、検証するために最新年度の指標を使って、ZARA vsユニクロで、3つの指標について見てみましょう。
VS.1 株主以外からお金を集めた割合はどれくらい??
まず資金調達の方法です。ZARAは調達したお金の内、資本家以外から集めた割合が35%。これは「ロー・ギアード」な状態。対してユニクロは52%で「ハイ・ギアード」な状態です。ユニクロの方が株主以外からもお金を集めているという事が分かります。
企業は借金が返せなくなったタイミングでつぶれます。そして、配当は「払わない」という選択肢もできます。しかし、銀行に対する借入は基本的にその選択はありません(リスケはありますが。)そのような意味で、ユニクロの方がリスクが高い経営をしているといえます。
VS.2 どちらの方が投資が上手くいっている??
投資が上手くいくと売り上げが増えます。例えばユニクロはこの指標が1.090。持っている資産の1.09倍の売上を上げています。100万円の資産を使って109万円の売上を上げられる企業だという事です。
これに対し、ZARAはこの指標がなんと1.251。100万円の資産から125万円の売上をあげられるということを示しています。
このように、 資産回転率は企業の投資からどれだけの売上を上げているかについて調べる指標です。そして、この指標はZARAの方が優秀です。
VS.3 売上が利益になる効率のいい企業体質なのはどちら??
最後のステップ、利益率ですが、こちらもユニクロ8%に対してZARAは13%で大勝しています。100万円の売上だとユニクロは手元に8万円しか残りませんが、ZARAは13万円も残ります。こちらもZARAの方が優秀ですね。
世界一の企業というのはネームバリューだけでなく、財務的にも非常に優秀な体質になっていることが分かります。
いつも私たちは商品でユニクロとZARAを比べていますが、企業の財務面はZARAの完勝のようです。このように見ていくと、ユニクロのHPにあるZARAの時価総額の高さも納得ですね。
(業界でのポジション | FAST RETAILING CO., LTD.)
ユニクロがいかに優良な企業であるとは言え、ZARAを抜いて世界一になるのは並大抵のことではないことが分かります。
ユニクロが取りうるZARAへの対抗策は?
ではユニクロはどのような打ち手でZARAに対抗しようとしているのでしょうか?
私は大きく分けて3つあると思います。
まず1つ目がZARAに勝っている「店舗当たりの売上高」を維持するべく大店舗の出店を継続。これによって売上を維持します。
2つ目は「無人工場」や「有明プロジェクト」を推し進め続けてコスト削減を徹底。それを通して利益率の向上を狙います。
3つ目がアリババなどの情報を活用した情報製造小売業への転換。
つまり、今のユニクロの取り組みは全てZARAを超えるための有効な打ち手と言えそうです。
最後はZARAの分析ではなくなってしまいました(笑)
いずれにしても、 縦比較(時系列比較)だけでなく、横比較(他者比較)を織り交ぜると、会社の分析に深みが出ます。
皆さんもぜひお試しくださいませ。
ROEが分解できる理由についてお知りになりたい方は
をご覧ください。